昨日、日産自動車のカルロス・ゴーン会長が逮捕された。容疑は、「金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)」。2010年~2014年の5年度分の有価証券報告書上、同容疑者の報酬は約49億8,700万円と記載されていたが、実際の報酬は約99億9,800万円で、約50億円も過少記載していた疑いが在る事になる。共謀の疑いで、同社のグレッグ・ケリー代表取締役も逮捕された。
報酬額に付いては余りに大き過ぎて、唖然とするしか無いのだが、過少記載が事実だとすると、「高額な報酬に対する、株主からの批判を避ける為。」というのが理由なのだろう。(金額が大き過ぎて、約49億8,700万円も約99億9,800万円も変わらない気がするが。)“オーナー社長”なら未だしも、“雇われ社長”のゴーン容疑者の場合、報酬は源泉徴収されている筈なので、脱税目的とは考え辛い。仮に脱税目的だったとしても、住民票が日本には無い彼の場合、脱税が問題となるのは海外でという事になるだろう。とは言え、過少記載が事実ならば、株主への重大な背信行為で在り、逮捕も当然。
今回の逮捕を受け、昨夜、日産の西川廣人社長が緊急会見を行った。ゴーン容疑者には逮捕容疑以外に、「私的な目的での投資金支出」と「私的な目的での経費支出」在ったと言い、明らかになったのは内部告発によってだと。此れ等も事実ならば公私混同の極みだし、「ゴーン容疑者が常々訴えていた“企業の透明性”とは、一体何だったのか?」と思ってしまう。
又、公私混同も然る事乍ら、少なくとも“報酬の過少記載”に付いて、同社の上層部が全く知らなかったとは思えず、“黙り続けていた事”への責任は免れられないだろう。
財政危機に陥っていた日産を立て直すべく、当時ルノーの上席副社長の座に在ったゴーン氏が、最高執行責任者(COO)に就任したのは1999年。彼が、45歳の時だった。其れから19年、「権力は、腐敗する。絶対権力は、絶対に腐敗する。」という有名な言葉が在るけれど、其の通りだろう。
財政危機に陥っていた日産を立て直し、一時は“日産グループ”として世界販売実績を第2位迄にしたゴーン容疑者。其の功績は、否定する事が出来ない。でも・・・。
実は一時期、自動車関係の仕事をしていた。取引相手の1つが日産で、内情は少なからず知っている。ゴーン氏が日産を立て直した大きな要因の1つに“強烈なコストカッター”という面が在るが、“首切り”された数多の社員達の“犠牲”が在った事を忘れてはいけないし、何よりも苛烈なコスト削減の為、“激しい下請け虐め”に直面され続け、怨嗟の声を上げている人達を多く見て来た。
そういう苛烈さが無ければ、日産の立て直しは出来なかったのかも知れないが、「本当に優秀な経営者は、“弱い者虐め”をする事無く、結果を残す。」という考えを持っているので、「結局、弱い者虐めをして、美味しい汁を吸っているだけじゃないか。」という思いを、ゴーン容疑者に対してずっと持っていた。今回の逮捕により、彼の功績の部分を改めて感じはしたが、同時に其の“罪”の部分も、より強く感じる事に。