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違法な臓器売買の検挙は、形を変えた殺人だ。練馬区の公園で、少年の死体が発見された。調査の結果、少年は中国人と判明。然も、死体からは臓器が持ち去られていた。捜査1課の犬養隼人(いぬかい はやと)は、後輩の高千穂明日香(たかちほ あすか)と共に捜査に乗り出す。少年の生家は、最貧層の家庭だった。日中の養子縁組を仲介する不審な団体の存在も明らかに。
其の頃、都内では相次いで第2、第3の3体が見付かる。矢張り被害者達は、貧困家庭の少年だった。背後に見え隠れする巨大な陰謀。に立ち向かう犬養達の執念と葛藤。
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今回読んだ小説「カインの傲慢」は、中山千里氏の「刑事犬養隼人シリーズ」の第5弾。被害者は全員少年という連続殺人事件、其れも体内から臓器が持ち去られているという、実に猟奇的な事件を犬養が捜査する。
事件の背景に在るのは、「家庭の貧困」と「生活の過酷さ」。満足な食事も取れない家庭を狙った、悪辣な連中には不快さしか無い。
「自身の幸福を得る為に、全く無関係な人間を犠牲にする。」なんて、絶対に許される事では無い。でも、「全く無関係な人間の為に犠牲になる事で、自身の身内が助かる。」という現実が在るとしたら、悩ましさが無い訳では無い。“臓器持ち去りの指示を出していた人間の本当の目的”が最後の最後に明らかになるのだけれど、「正義を貫いた結果が、必ずしも100%ハッピーになるとは限らない。」というのは本当に皮肉だし、残ったのはどんよりとした思い。
「犯人は、意外な人物。」というのはミステリーの“御約束”だけれど、「ストーリーの流れから、犯人候補から外した人物。」が犯人の1人だった。「犯人で在って欲しく無い。」という思いが、自分の心の中に在ったのかも知れない。そういう意味でも“後味”は良く無い作品。
総合評価は、星3つとする。