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真ん中に一文字「子」という漢字が入った、灰色の滑々とした楕円形の石。神支村(かみしむら)の子供達が祭りの夜に捜す「ねずみ石」は、願いを1つだけ叶えてくれる。
中学1年生の「サト」事土井諭大(どい さとひろ)は4年前の祭りの日、一時行方不明になった。其の夜、村で起きた母娘殺人の犯人は、未だに判明していない。親友「セイ」事山田誠也(やまだ せいや)と共に、祭りを調べて行く内、第2の殺人事件が発生。そしてサトは、事件の真相へと迫って行く。
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大崎梢さんの小説「ねずみ石」。当ブログで何度も記しているが、大崎さんは元書店員で、其れも在って書店や本を題材にした作品が多い。書店や本を題材にしていない「ねずみ石」は、其れだけでも異なった色合いを有しているが、明らかに他の大崎作品と異なるのは、「殺人事件」が扱われているという点だろう。
「天才探偵SENシリーズ」同様、「ねずみ石」はジュヴナイル特有のホンワカとした雰囲気を有してはいるのだが、「殺人事件」が扱われていたり、すっきりとしない蟠りが心に残る作品だ。後味が良い作品では決して無いが、先の展開が読めず、ついつい読み進めてしまう。
或る人物が口にした「施設」というのが、何を指すのか漠然とは判るものの、結局は明確に明らかにされなかったり、或る人物が或る人物に対して疑念を抱いた理由がはっきりしなかったりと、もやもや感が残る部分が幾つか在る。そういった部分は減点ポイントだが、総じて言えば魅力的な作品と言える。
総合評価は、星3.5個。