ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「龍の墓」

2024年02月21日 | 書籍関連

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東京都町田市郊外で発見された身許不明焼死体。町田署の女刑事・保田真萩(やすだ まはぎ)は、警視庁捜査1課の南条(なんじょう)とコンビを組んで聞き込みを開始するが、事件解決に繋がる有力手掛かり掴めずに居た

そんな中、荒川区内で女性の変死体が発見される。其の殺害状況が公表されるや、ネット上で或る噂が囁かれ始めた。「町田と荒川の殺人は、人気VR(ヴァーチャル・リアリティ)ゲーム『ドラゴンズ・グレイブ』の中で発生する連続殺人の見立てではないのか?」。一見、何の繋がりも無い様に思えた2つの事件だったが、軈て其の噂を看過出来なくなる様な事態へと発展して行く。
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貫井徳郎氏の小説龍の墓」は、「“仮想世界”、即ち“VRの世界”に入り込むツール“VRゴーグル”が普及した事で、其れ生活必需品スマホ廃れて行った社会。」を舞台としている。20代以下の若者で言えば、スマホ・ユーザーは皆無に等しい状況で、多くの人間がVRゴーグルを着用し、VRの世界に浸り切っている状況。「余りにもVRの世界がリアル過ぎて、現実社会に戻れない人間が続出している。」事が、社会問題になっていると言う。

そんな社会で発生した連続殺人事件が、実はVRゲーム「ドラゴンズ・グレイブ」の中で発生する連続殺人事件の見立てで在る可能性が指摘される。「現実社会では女刑事・保田真萩が、そしてVRゲーム内では真萩の元同期で、或る事件によって警察を辞め、今は“引き籠り状態”に在る瀧川(たきがわ)が、其れ其れ連携”して、連続殺人事件の謎を解き明かして行く。」というストーリー。

VRゲーム「ドラゴンズ・グレイブ」は「中世ヨーロッパ的世界を舞台にした剣と魔法の物語」で、「目の前に現れた“選択肢”を選ぶ事で登場人物達と“会話”し(選択肢を的確に選ぶと、更に選択肢が増えて行く。)、提示されたクエストをクリアして行く事で、“物語”が展開して行く。」という設定は、自分が大好きな「『ドラゴンクエスト』シリーズ」を彷彿させる

現実社会とVRの世界が交互に描かれる、非常に独特世界観社会派の作品を多く手掛けて来た貫井氏だったので、が全く異なる「邯鄲の島遙かなり」(総合評価:星3.5個)が上梓された際には、「こういう作品も書くんだ!」と非常に驚いた。今回の作品も又、貫井氏らしからぬ作品で、“作家としての成長”を感じさせる

雰囲気的”には、貴志祐介氏の初期作品「クリムゾンの迷宮」が重なる。貴志作品の中でも特に好きなテーストで、ワクワクし乍ら読み進めた物だが、其れに比べると「龍の墓」は、そういった部分が薄い様に感じる。「現実社会とVRの世界を“リンク”させる。」という発想は面白いけれど、肝心の“犯行動機”が個人的にぴんと来ないし、取って付けた様な“笑いの要素”(南条に関する意外な事実等。)も余計だったのではないか?

総合評価は、星3つとする。


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