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「休日の部活動有料化 杉並区立和田中 コーチを企業委託」(9月21日付け東京新聞【夕刊】)
東京都杉並区立和田中学校で、スポーツ・コーチの派遣企業に休日、運動部の指導を委託する取り組みが本格的に始まった。生徒1人当たり1日5百円を支払い、専門のコーチから指導を受ける。教師の負担が減り、生徒は高い技術指導を受けられる反面、有料での部活動には議論も起きそうだ。
文部科学省によると、公立中学校で企業に有料で委託するのは全国でも珍しい。
「部活イノベーション」と名付けた取り組みで、スポーツ・スクール等を展開するスポーツデータバンク(中央区)、リーフラス(同)の2社と、部活毎に年間契約を締結。各部の保護者が話し合って委託を決めた。
形式的には部活動とは別の位置付けで、委託する日は安全管理も企業に任せる為、顧問の教師は立ち会わなくて良い。1日の指導は約3時間で、怪我等事故時の保険料も代金に含まれる。
サッカー部では3年前から、安全管理を学校が担う形で試験的に導入し、生徒の評判は良いと言う。9つ在る運動部の内、野球部やバスケットボール部等6つの運動部で6月から順次、委託を広げている。文化部の保護者からも要請が在り、来年度からは吹奏楽部への導入も検討している。
和田中は4年前から、保護者や地域住民が学習塾と契約して夜間に有料で授業を受けられる「夜スペシャル」を続けている。今回は、休日の運動部版の様な側面も在る。
学校の部活動は、教師等のヴォランティアに頼っているのが現状だ。
代田昭久校長は「普段と違う指導者に高い技術指導を受ける事は、中学生にとって大きな刺激になる。」と利点を強調している。
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教師をしている友人が良く口にしているのは、「雑務、其れも“仕事の為の仕事”としか思えないペーパーワークが多い。平日はそういったペーパーワークに忙殺され、休みは部活動の立ち合いに駆り出される。部活動の立ち合いは“ヴォランティアとして”が当然の事とされ、何か問題が起これば『一切合財、教師が悪い!』となってしまうのだから、本当に遣り切れない。」と。そんな愚痴を零し乍らも、根が真面目な彼は、日々必死で教職に励んでいる様で、十把一絡げにして「教師は全て悪い!」といった批判がされてしまう風潮が気の毒でならない。
和田中学と言えば、ユニークな取り組みを色々行っている事で有名。其の代表格が「夜スペシャル」だが、此れに関しては当初「成績優秀者だけを対象にしている。」とか、「生活が苦しい家庭の子は、受けたくても受けられない。」等の批判が集まっていた。自分も「もしそうならば、要らぬ差別を生み出してしまうのではないか?」と疑問を感じていたのだが、「成績不振者には『土曜寺子屋』なる補習授業体制が、そして費用が払えない生徒には、地域本部が実費を負担する事で、授業料免除の制度が在る。」という続報に触れ、「其れならば、必ずしも悪い制度では無いだろう。」と考えが変わった経緯が。
で、今回の報道に付いてだが、最初にサッと“流し読み”した段階では、「教師の負担が軽減される事で、教師としての資質向上に時間を回せるならば、悪くは無い制度。生徒が高い技術指導を受けられるのも、好ましい事だろうし。唯、「1人当たり1日5百円」と言っても、“毎日”の事となると、親(学校?)の負担は馬鹿にならないだろうな。」と、判断に迷う部分が在った。しかし良く良く記事を読み返すと、有料化は「“休日”の部活動」に限っての事で、平日は従来通りに教師が立ち会うという事の様だ。
「休日は休日として、教師はきちんと休め、休日限定とはいえ、生徒は高い技術指導を受けられる。元プロの選手達の働き口も、恐らくは増えるだろう。」と賛成の思いが強いのだが、1点気になるのは「“プロのコーチ”が介在する事で、『レクリエーション的な面』や『躾教育的な面』が蔑ろにされ、コーチ乃至は派遣企業の評価アップの為、『成績至上主義的な指導』がメインになってしまうという可能性。」に付いて。其の点がクリアになれば、「休日の部活動有料化」というのは悪くないと思うのだが・・・。
ただ、先生の中にも、学生時代から野球やサッカー、陸上競技で活躍した人も少なからずいらっしゃいますし、休日出勤も全く苦にならぬほど、指導に情熱を持つ人も少なくないでしょう。そういった「熱心な先生」と、「休日限定コーチ」との間で、指導方針をめぐって対立が生じる、ということは起こり得ると思います。お互いの話し合いで、指導についての「共通認識」を確立することが必要だと思います。
参考までに、往年の名ランナーで、指導者としても多くのランナーを育成した、双子の宗兄弟の兄、茂さんがかつてこのような事を語っていました。
「社会人(実業団)の指導は楽ですよ。競技のことだけを教えていればいいのですから。学生の指導はそういうわけにはいけないでしょう。中学生くらいの年代が一番難しそうですね。」
学生時代にスポーツ系の部活に入り、日々汗を流していた友人が居ます。彼も現在教職に就いていて、スポーツ系の部活の顧問をしています。休みの日も手弁当で指導しており、休めない現実ですが、「大変だよ。」と言い乍らも、彼の場合は其れを楽しんでいる所も。
とは言え、教師の善意に許り頼っている現実というのも、好ましくは無いと考えています。こういう無理は、何処かで破綻を来たし兼ねないから。
「指導に付いての、『共通認識』を確立する事が必要。」、此れは其の通りですね。ジャイアンツで嘗て良く見られた事ですが、ジャイアンツOBに限らず、他チームの大物OBが取材やら解説やらの際に選手達に“指導”を行い、コーチからの指導とは全く異なっている事で、選手がパニック状態になってしまう・・・なんて事が在りました。生徒達を混乱させる事だけは、避けなければいけませんからね。
中でも柔道!
投げられる衝撃で死ぬ事故が多発している。多くの場合は投げによる「重力加速」で、脳が揺さぶられて死ぬケースです。
これ、投げられ方を学ぶ事で、かなり発生を押さえられます。
その証拠に、日本で多発するのに対して、やはり柔道大国であるフランスでは、過去30年に一度も起きていない!
今の柔道の教育システムに問題がある!
日本の講道館は、戦後にスポーツを掲げて武道たるを捨てたもので、実は年々、投げられる対処を習得する時間が削られてます。護身という概念を喪失してるから。
ある五輪選手による指導を見学した事があるのですが、やはり五輪に行くだけあって基本が出来ていて、「投げへの対応」「相手を危険な投げ方をしない方法」「危険な組み打ちになった時に止める基準」などを教えてました。
これ、格闘でなくとも、雪道での転倒や、バイクで転倒した時に役立ちますよ!
武道は本来、殺人技術であり、それ故に「死なない方法」についても厳格なものでした。
私はこうした「基本技術」は、初心者ほど、きちんとした専門教育を受けてきた「熟練者」が指導をするべきと考えています。
そもそも危険なものである格闘術を必修する以上は、専門家を雇い、お金を払うのは当然です。
自衛隊で正規採用される実戦性の高い武道ですが、プロテクター・グローブ装着のポイント制故に、どうしてもオフェンス技術の習得と、殴り合いに傾きがちで、防御技術の習得が甘い側面がありました。
この点で素手でガチンコする直接打撃制の実戦カラテや、キックボクシング、ボクシングの方が、組手をする前に防御方法をキチント教えているように思えました。
攻撃はある程度の資質があれば勝手に進歩しますが、防御はきちんとした指導者が必要です。
こうした側面からも、前述の柔道教育には、
熟練者に金をはらってでも指導をさせるべきです。
去年放送された或るヴァラエティー番組で、世界的な日本ブームに乗っかり、イタリアで多くの生徒を集めている柔道場が紹介されていました。柔道場と言っても、其処の“師範”は来日経験が無い許りか、柔道を真面に習った経験も無く、教えているのは柔道とは程遠い、アクロバティックな見世物。其処に覆面をした柔道家・瀧本誠氏が“素人”と称して乗り込み、最後に正体を明かすという内容っでした。
アクロバティックな見世物だから、もう受け身も糞も無い。「こんな事遣ってたら、大怪我するぞ。」と冷や冷や。自分は高校の時に授業で柔道を習いましたが、1年だけとはいえ、受け身を習ったのは凄く良い経験でした。と言うのも、以前に階段から転げ落ちた際、上手く受け身が取れた事で、幸いにも怪我らしい怪我はしなくて済んだので。
限られた時間内では、どうしても基礎が疎かにされ勝ち。教えるプロで在れば、限られた時間内でも、最低限必要な事はきちんと教えられるだろうし、そういう意味でもプロが教えるというのは「在り。」だと思いますね。(記事内でも触れた様な懸念も在りますが。)