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神紅大学ミステリ愛好会会長・明智恭介(あけち きょうすけ)。小説に登場する探偵に憧れ、事件を求めて名刺を配り歩く彼は、果たしてミステリ小説の様な謎に出逢えるのか。
大学のサークル棟で起きた不可解な盗難騒ぎ、商店街で噂される日常の謎、夏休み直前に起きた試験問題漏洩事件等、「屍人荘の殺人」以前、助手で在り、唯一の会員・葉村譲(はむら ゆずる)と共に挑んだ、知られざる事件を描く。
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2017年のミステリー関連の年間ブック・ランキング「2018本格ミステリ・ベスト10[国内編]」、「2017週刊文春ミステリーベスト10[国内編]」、そして「このミステリーがすごい!2018年版[国内編]」の3つで1位を獲得と、新人作家で"三冠"を達成した小説「屍人荘の殺人」(総合評価:星4.5個)。著者の今村昌弘氏が、「屍人荘の殺人」シリーズの第2弾「魔眼の匣の殺人」(総合評価:星3つ)、そして第3弾「兇人邸の殺人」(総合評価:星3.5個)に続く第4弾として上梓したのが、今回読んだ「明智恭介の奔走」。5つの短編小説で構成されており、「屍人荘の殺人」よりも以前の明智恭介&葉村譲の姿が描かれている。
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身内を騙って呼び出すのは、特殊詐欺の手口だ。「息子さんの声かどうか、分からないものなんですかね。」。「オレオレ詐欺の被害者件数を考えれば、致し方ないだろう。我々だって電話越しに親だと言われれば間違うかもしれん。そもそも声の波形をそのまま伝える固定電話と違い、スマホのような無線での通話で聞こえているのは本人の声に似せた合成音声だ。」。 (「宗教学試験問題漏洩事件」より)
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「屍人荘の殺人」の出来が非常に良かっただけに、以降のシリーズ作品には満たされない思いが在った。今回の作品は同シリーズの"プロローグ的な存在"だが、全体的にはピンと来ない内容だった。"トリック面での物足り無さ"というのが最大要因だ。
強いて言えばだが、「『シャーロック・ホームズ』シリーズ」の「赤毛組合」を思い浮かばせる作品「とある日常の謎について」が印象に残った。「価値が殆ど感じられない超老朽化したビルを、破格の値段で買い取った老人の目的は?」というのが重要なポイント・・・と思いきや、実は明智が探っていたのは"別の謎"に付いてだった・・・というのが意外だったので。
総合評価は、星3つとする。