手塚治虫氏の「MW」は、ジャンルで言えば「ピカレスク・ロマン物」で、後味の非常に悪い作品。此の作品の中で「化学兵器の漏洩」というエピソードが登場するが、此れは「1969年7月8日、沖縄のアメリカ軍基地内の知花弾薬庫で起こった猛毒のVXガス漏洩事故。」が下敷きになっていると言われている。同基地には致死性の物を含め1万3千トンもの毒ガスが貯蔵されていたそうで、漏洩した事によりアメリカ軍人等24人が病院に運び込まれた。沖縄が日本に返還される前の出来事だが、沖縄県民は事故が発生する迄、そんな危険な物が貯蔵されている事を全く知らされておらず、大きな社会問題となった。
「MW」の事を思い出したのは、「夕張山中に大量の『枯れ葉剤』 国有林に埋まる猛毒の謎」という朝日新聞の記事(10月27日)を目にしたからだ。枯れ葉剤は、ベトナム戦争で使用された事で有名。森に隠れ、ゲリラ戦を展開していたベトナム兵に手を焼いたアメリカ軍が、彼等の身の隠し場所を無くす目的で撒いた枯れ葉剤だったが、残留するダイオキシンの影響で、ベトちゃん&ドクちゃんに代表される数多の障碍者を生み出した。そんな恐ろしい枯れ葉剤の主成分で在る「2・4・5T剤」約600kgが、北海道夕張市南部の国有林内に埋められている。1970年代、日本政府によって埋められた2・4・5T剤、ベトナム戦争との関係を指摘する声も在るのだとか。
気になって調べてみた所、2年前に週刊誌「SPA!」で報じられていた様だ。此方に詳細が記されているけれど、「ベトナム戦争時、日本もアメリカ軍の枯葉作戦に、中間製品の供給という形で協力していた。ニュージーランドやオーストラリアで加工され、最終的にベトナムに運ばれていた。」との事。1971年4月、ベトナム戦争で枯葉作戦が中止された事で、2・4・5T剤が大量に不要となり、“判っているだけでも”国内54ヶ所の国有林内に埋められていると。
道県別の内訳は「北海道:7ヶ所、青森県:1ヶ所、岩手県:6ヶ所、福島県:1ヶ所、群馬県:2ヶ所、山梨県:1ヶ所、愛知県:2ヶ所、岐阜県:2ヶ所、広島県:1ヶ所、愛媛県:4ヶ所、高知県:6ヶ所、佐賀県:1ヶ所、長崎県:1ヶ所、熊本県:3ヶ所、大分県:2ヶ所、宮崎県:8ヶ所、鹿児島県:6ヶ所」で、埋められた薬剤の総計は「粒剤(顆粒状の薬剤)が2万5,062kg、乳剤(液体状の薬剤)が2,132リットル。」。こんなにも大量に埋められているとは・・・。