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製菓会社に寄せられた1本のクレーム電話。広報部員・岸(きし)は、其の事後対応をすれば良い・・・筈だった。訪ねて来た男・池野内征爾(いけのうち せいじ)の存在によって、岸の日常は思いも寄らない事態へと一気に加速して行く。不可思議な感覚、人々の集まる広場、巨獣、投げる矢、動かない鳥。打ち勝つべき現実とは、一体何か?
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伊坂幸太郎氏の小説「クジラアタマの王様」。設定や登場人物の名前もそうだが、伊坂作品にはタイトルも奇妙奇天烈な物が非常に多い。今回のタイトルもそんな1つだが、“クジラアタマの王様”とは、今回の作品で重要な役割を果たす鳥「ハシビロコウ」(一度見たら忘れられない、とても個性的なルックス!)のラテン語名を意味するのだとか。
設定も、非常に奇妙奇天烈だ。「“現実社会”に存在する人達が、“夢の世界”ではロールプレイング・ゲームの勇者の如く戦い、勝てば現実社会でも成功し、負ければ酷い目に遭う。」というのだから。
「接点の無さそうな人達が、意外な形で密接な関係になって行く。」、「唐突に時代が飛ぶ。」等、読者を煙に巻くテクニックは流石だ。知らず知らずの内に、伊坂ワールドにどんどん引き込まれて行く。
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人間を動かすのは、理屈や論理よりも、感情だ。同じ罪を犯した人に対しても、感情が左右すれば、まったく違う罰を平気で与える。理屈は後からつける。
パニックを起こすのも感情だが、罪を大目に見ようというムードを生み出すのも感情、というわけだ。
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総合評価は、星3.5個とする。