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元特捜検事・宗光彬(むねみつ あきら)。高度な法律関連事案の解決を請け負う彼は、裏社会の人々から“非弁護人”と呼ばれる。
ふとした経緯で彼は、パキスタン人少年から「居なくなったクラスメートを捜して欲しい。」という依頼を受けた。失踪した少女と其の家族の行方を追う内に、底辺の元ヤクザ達と其の家族を食い物にする男の存在を知る。夥しい数の失踪者達の末路は、余りに悲惨な物だった。
非道極まる“ヤクザ喰い”を、法曹界から追放された元検事が、法の名の下に裁く。
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月村良衛氏の小説「非弁護人」を読了。東京地検の検事だった宗光彬と篠田啓太郎(しのだ けいたろう)は、親友の間柄だった。だが、権力による悪事を共に追う過程で篠田の“裏切り”に遭う。宗光は逮捕され、栃木刑務所で懲役刑に処され、2人は袂を分かつ事に。篠田はヤメ検となり、成功を収めていたが、篠田は“犯歴”からヤメ検になる事も叶わず、裏社会の人間が関わる高度な法律関連事案の解決を請け負う“非弁護人”となっている。そんな設定で始まる作品。
「権力に身を売った元検事と、裏社会の人間を助ける元検事。」という設定は、正直気分が良い物では無い。でも、過去の経緯から2度と交わる事の無いと思われていた2人が、社会の底辺で苦しんで来た弱者達を救う為、共に闘う事になるという展開に、読者はぐっと引き込まれる事だろう。法廷戦略の描写も詳細で、実に興味深い。
「医師免許は持っていないが、神業的な外科手術の腕を持ち、難手術を次々と成功させる。金持ちからは法外な手術料を分捕るも、弱者からは少額の手術料しか取らなかったり、無料だったりする。」というのは、漫画の神様・手塚治虫氏が生み出したキャラクターのブラック・ジャック。「パキスタン人の少年から依頼された人捜しを、彼が昼の御飯代を貯めたという3千3百円の依頼金だけで、必死になって取り組んで行く宗光。」の事を、ネット上の書評で“法曹界のブラック・ジャック”と書いていた人が居たけれど、言い得て妙だと思った。「ブラック・ジャック」が好きな人ならば、感情移入してしまう作品だろう。
総合評価は、星3.5個とする。