「絶対に忘れてはいけない出来事」というのが在る。リアル・タイムに見聞しようがしまいが、絶対に忘れてはいけない出来事は、絶対に忘れてはいけないと思う。彼の日の恐ろしくも哀しい光景をTV画面で見続けた自分にとって、阪神・淡路大震災も絶対に忘れてはいけない出来事の1つ。彼の日から今日で18年。鎮魂の思いを新たに・・・。
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定年退職後、近所のゲーセン「エレクトリック・ゾーン」に再就職した、腕に覚え在りの剣道の達人“キヨ”事、清田清一(きよた・きよかず)。
同じく武闘派の柔道家で、居酒屋「酔いどれ鯨」の元亭主“シゲ”事、立花重雄(たちばな・しげお)。
機械を弄らせたら無敵の頭脳派だが、愛娘には滅法弱い機械工場経営者の“ノリ”事、有村則夫(ありむら・のりお)。
子供の頃、町内で「三匹の悪餓鬼」と呼ばれていた彼等が、町の平和を守る為、私設自警団「三匹のおっさん」を結成。キヨの孫・祐希(ゆうき)、そしてノリの娘・早苗(さなえ)という高校生コンビも手伝って、町内の悪を斬り捲る。
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登場人物達のキャラ立ちが素晴らしく、一気に読了してしまった小説「三匹のおっさん」(著者:有川浩さん)。続編となる「三匹のおっさん ふたたび」を、今日はレヴューする。
「三匹のおっさん ふたたび」は7つの短編小説から構成されており、6つは三匹のおっさん達が活躍する話で、残りの1つ「好きだよと言えずに初恋は、」(恐らくは有川さんも、村下孝蔵氏の「初恋」【動画】が好きなのだろう。)は「小学6年生の男女の淡い初恋」を描いた話となっている。
第2話では「遊び感覚で万引きする子供達と、其の事で苦しむ書店店長。」を描いているが、書店は「1冊万引きされた場合、同じ本を5冊売らないと穴埋め出来ない。」と言われる程厳しい経営状態と言うのに、「万引きした子供を追い掛けて、逃げた相手が車道に飛び出し、事故に遭ったりすると、書店側が悪いと非難されてしまう。」という現実には、非常に気の毒さを感じてしまう。「窃盗犯よりも、窃盗犯を追い掛けた人間の方が悪い。」となってしまうのは、どう考えてもおかしいと思う。
「常識の無い若者」も少なく無いけれど、一方で「常識の無い中高年」も少なく無い我が国。そんな「見た目は大人だけれど、中身は幼児。」といった人達を取り上げた第4話と第6話も、中々面白い。
一番印象に残ったのは、「“シゲ”と其の息子の康生(こうせい)」という親子を描いた第5話。康生は父親の跡を継いで居酒屋『酔いどれ鯨』の店長を務めている。小学校に上がる迄は、包丁を握って作業する父親に憧れ、自分も包丁を握って作業の真似事をしては、父親から褒められたりしていた康生。父親が大好きで、「御父さんと一緒に店を遣る。」のが将来の夢だったのだけれど、小学校に上がってからは、「同級生の父親達が背広姿で働くサラリーマンで在る一方、自分の父親はジャージーや店の制服しか着ていない。」等、「他所の御父さんとは違っている父親」に引け目を感じ始める。其の事で「料理を作る作業」のみならず、「父親」からも距離を置く様になってしまい、父の店を継いだ今でも、其の当時の事が“心の澱”として残っている。
「今、父親との関係が悪い訳では無い。寧ろ他の親子より、ずっと良い関係に在るだろう。でも、父親に背を向け続けてしまった当時を思うと、複雑な気持ちで一杯。」というのが康生の気持ちな訳だが、そんな中、ずっと途絶えていた「町内の祭」を復活させようという思いが湧き上がる。「シゲさん、カッコいいよな。こういうときはサラリーマンじゃカッコがつかないよ。」、子供の頃、自分を弟の様に可愛がってくれた人が、そう父親を褒めてくれ、自分自身も素直に父親を格好良いと感じた彼の頃を思い出したからだった。
町内の祭を復活させようとする“二代目達”と、そんな彼等をバックアップする“親達”の姿。シゲと康生の親子関係も含め、読んでいて心が熱くなった。
総合評価は、星3.5個。
「光陰矢の如し」と言いますが、「彼の日から、もう18年経ったのか・・・。」という思いが在ります。でも、18年経った今でも仮設住宅に住んでおられる方が少なく無く、そして震災後20年を迎える2年後には、其処から追い出されてしまうというニュースに触れますと、当事者の方からすれば全く「過去」になっていない事でしょうね。
阪神・淡路大震災、そして2年前の東日本大震災では、多くの善意が感じられた。でも、其れは一過性で在ってはならず、継続的に皆で支援して行く事が必要。大した事は出来ないのですが、先達て何度目かの募金をさせて貰いました。