「“廃墟”等、変わった場所を旅する。」というコンセプトで、YouTubeに動画をアップされている“のぶりん”氏。神戸の異人館【動画】等、「廃墟や過疎地というイメージとは程遠い地域の意外な寂れ具合を次々と目にし、『日本には、こんなにも廃墟や過疎地が存在するのか・・・。』と愕然とした思いになる。」事も屡々。
其の他にも「止まらぬ少子高齢化」や「食料自給率の低下」等々、“日本の将来に不安を感じる事柄”は枚挙に遑が無いのだけれど、「大工の減少」というのも在る様で・・・。
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「『大工』が居ない 20年で半減、住宅業界に危機 若者離れも深刻」(12月17日、毎日新聞)
大工の減少が深刻化している。人数は、令和2年(2020年)時点で約30万人。過去20年間で半減しており、此の儘減少が続くと、木造住宅の建設やリフォーム等に大きな影響が出る可能性も在る。背景には、不安定な雇用形態や若者離れが在る。其の課題に取り組む企業を取材した。
総務省の国勢調査によると、平成12年(2000年)に64万6,767人居た大工は、平成22年(2010年)に40万2,120人、令和2年(2020年)は、29万7,900人と、大きく減少している。
大工の若者離れと高齢化も深刻になっている。平成2年(1990年)に15歳~19歳の大工は1万6,657人だったが、平成22年(2010年)には2,150人、令和2年(2020年)は、2,120人に減少した。同年では、大工の内最も多い世代が65歳~69歳の4万8,450人となり、全体の約16%を占める様になった。65歳以上は、約3割に及ぶ。此の世代の引退が迫っており、若手を含む大工の確保が、大きな課題となっている。
そんな中、大工の正社員雇用や育成等、大工の待遇改善に力を入れているのが、住宅・リフォーム業を展開する「ハウジング重兵衛」(千葉県成田市)だ。
代表の菅谷重貴さん(41歳)は大工の若者離れに付いて、大工に対する先入観が大きいとし、「『3K』と呼ばれる様な『きつい』、『汚い』、『危険』といった労働環境のイメージや、『技は盗む物』といった職人気質に抵抗感を持つ人も居る。」と語る。
同社は、若手確保の為、平成30年(2018年)から、職人の正社員雇用をスタート。研修制度も強化し、礼儀やマナー、基本的な知識や技術等を約3ヶ月間、研修等を行った上で、親方に同行して現場で学んで行く。
此れ迄殆ど教えた事も教えられた経験も無かった親方等だったが、「自分の息子だと思うと厳しくしてしまうけど、社長の息子だと思って育てるよ。」と受け容れ、会社全体で若手を育てるという共通意識を持った。其れが評価にも繋がる様に、新たに評価制度も設けたと言う。作業着も、ニッカポッカで無く、デニム地のクールなデザインの物を会社で支給する等、従来の職人のイメージを一新する取り組みを行っている。
中途採用の他、毎年1人~3人新卒採用も行っている。平成29年(2017年)に5人だった職人は、令和5年(2023年)10月時点で26人に迄増えた。将来を見据え、大工だけで無く、水道や塗装、電気、トイレやキッチンの交換等の住宅設備等、家作りに関わる全ての工事を熟す「多能工職人」を目指して育成しており、「自分だけで、一棟を建てたい。」と意欲を燃やす若手社員も居ると言う。
菅谷さんは、震災や台風等の有事でも職人の役割は大きいとし、「安定した環境で、手に職を付ける楽しさを知って貰い、職人を目指す人を増やして行きたい。」と語った。来年2月には、千葉県内に職人学校の設立も予定していると言う。
厚生労働省「令和4年(2022年)賃金構造基本統計調査」によると、「大工の年収は10人以上の企業規模で406万6,600円、1,000人以上が458万5,200円。」だった。唯、建設職人を中心に作る全国建設労働組合総連合(全建総連)によると、大工は、個人事業主の「一人親方」や5人未満の小規模が多く、全建総連に加盟する県連や組合に行った調査によると、令和3年(2021年)の大工の年収は387万9,000円。日本の平均年収の443万円(国税庁「令和3年(2021年)分 民間給与実態統計調査」)を大きく下回っている。
全建総連の賃金対策部長、長谷部康幸さんによると、ハウス・メーカーや低価格の分譲住宅のパワービルダーの下請けや孫請けで発注を受ける為、単価が下がり易く、更に資材価格の高騰の皺寄せを受けて、単価が下がるケースも在ると言う。
建設業界の労働問題に詳しい芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授(建築学)によると、一人親方の中には、本来は社員にすべき人を独立させて個人事業主とする「偽装一人親方」も多いと言い、健康保険料や厚生年金保険料等の法定福利費の負担や、労働時間の管理を免れるケースが横行。社員化が進まない原因にもなっていると言う。
蟹澤氏は、減少が続く大工に付いて、令和17年(2035年)には、半減して15万人、令和27年(2045年)には、10万人を切ると予測する。国内人口の減少等で新築住宅の需要が減っても、大工の不足により、新築工事が出来なくなる可能性も在ると指摘。更に老朽化した住宅の修繕等も必要となる為、職人不足の深刻化が予想される。
蟹澤氏は、時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」で、人手不足や偽装一人親方化が深刻化する可能性も在るとし、「業界を挙げて、賃金や雇用環境を改善する必要が在る。」と訴えた。
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「日本の大工の人数が、20年間で半分以下になった。」というのは、非常に衝撃的。元記事にも在る様に、「大工=3K」というイメージは確かに在るし、平均年収の低さも“大工への若者離れ”の大きな要因だろう。
又、元ジャイアンツの投手・槙原寛己氏がYouTubeで「ミスターパーフェクト槙原」【動画】というのを運営しているが、ジャイアンツでヘッド・コーチも務めていた元木大介氏がゲストで出演した際、「自分が選手だった頃、コーチから『俺達はこう遣って来たんだから、御前も従え!』みたいな“理不尽な指導”を受けた。そういうのは納得出来なかったから、自分はコーチとして選手の話をきちんと聞き、納得して貰える様な指導を心掛けていた。決して、選手を甘やかす訳では無く。」といった趣旨の発言をしていた。」のが、強く印象に残っている。
“徒弟制度”が色濃く残っている大工の世界でも、そういった理不尽な事柄は多いだろうし、「技術は親方が弟子に対して懇切丁寧に教える物では無く、弟子が親方の仕事を見て盗む物だ。」というスタンスも、今は理不尽で時流に合わないと言って良いだろう。労働環境を徹底的に改善し、「こういう場所で働きたい!」という“夢”を与えないと、“大工への若者離れ”は進んで行く一方だろう。