ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「クスノキの番人」

2020年03月29日 | 書籍関連

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其の
木に祈れば、願いが叶うと言われている。其の番人任された青年と、楠の祈念に訪れる人々の織り成す物語。

不当な理由で職場を解雇され、其の腹癒せに罪を犯し、逮捕されてしまった直井玲斗(なおい れいと)。同情を買おうと取調官に訴えるが、其の甲斐も無く送検起訴を待つ身となってしまった。其処へ突然、弁護士が現れる。依頼人の命令を聞くなら、釈放してくれると言うのだ。依頼人に心当たりは無いが、此の儘では間違いなく刑務所だ。其処で、賭けに出た玲斗は従う事に。

依頼人の待つ場所へ向かうと、年配の女性・柳澤千舟(やなぎさわ ちふね)が待っていた。彼女は驚く事に、玲斗の伯母でも在ると言うのだ。余り褒められた生き方をせず、将来の展望も無いと言う玲斗に、彼女が命令をする。「貴方にして貰いたい事、其れは楠の番人です。」と。
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東野圭吾氏の新刊クスノキの番人」は、“不思議な楠”の番人を任される事になった玲斗が主人公。ネタバレになってしまうので「どういう風に不思議な楠なのか?」は書かないけれど、スピリチュアルなストーリーで在る。

妻子持ちの男性との間に儲けた玲斗を、女手で一つで育てる事にした母・美千恵(みちえ)。自身の母・富美(ふみ)と一緒に暮らし、彼女に玲斗の面倒を見て貰い乍ら水商売で働き詰めた美千恵だったが、無理が祟り、玲斗が小学校低学年の時に病死してしまう。父が誰なのかも知らず、幼くして母を亡くした玲斗は、腹癒せで犯した罪により逮捕された事で、自暴自棄な思いになっていたのだが、そんな彼の前に母の腹違いの姉・柳澤千舟が現れる。彼女から任される事になった“楠の番人”をする中で、彼は色々な事を知り・・・というストーリー。

“家族”という物を考えさせられる話。もっと言ってしまえば、家族って何なのだろう?家族の形とは?といった事だ。自身の生きて来た環境に卑屈さを感じていた玲斗が、千舟との出会いによって変わって行く様子に心を動かされる。特に“彼女の秘密”を知った後(物語の最終盤)、玲斗と千舟の“本当の思い”が明らかとなる場面が実に良い。

スピリチュアルな内容でも在るので、そういう部分に感情移入出来ないという読者も存在する事だろう。自分もそういうのは苦手な方だが、此の作品に関しては抵抗無く読めたし、面白かった。

総合評価は、星4つとする。


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