ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「影の地帯」

2015年03月29日 | 書籍関連

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飛行機の中から富士山を写した許りに思いも掛けぬ事件に巻き込まれたカメラマン田代利介(たしろ りすけ)は、撮影旅行先の木崎湖青木湖で不気味な水音を聞き、不審波紋を目撃する。

 

行く先々に現れる小太りの男と謎の木箱を追う田代の周辺で、次々に起こる殺人事件は、保守党の有力幹部・山川亮平(やまかわ りょうへい)失踪事件と関連を持ち始め、偶然必然織り成す経過の内に、醜悪で巨大な其の全貌を現わし始める・・・。

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多くの名作を生み出した松本清張氏だが、映像化された作品は幾つか見ているものの、実際に読んだ作品は「小説帝銀事件」だけだったりする。「点と線」や「ゼロの焦点」、「砂の器」といった余りにも有名な作品ですら未読なのだから、ミステリー・ファンとしては恥ずかしい限り。

 

「清張作品を読んでみようかな。」と思い立ち、手に取ったのが「影の地帯」という小説梗概冒頭に記したが、カメラマンとしての仕事を終え、東京に戻る途中の機内で、田代は2人の人物と“偶然”接する事になる。綺麗な女性と人目を避ける様な小太りの中年男がそうで、隣り合って座る2人の関係性が良く判らない。で、東京に戻って以降、田代の前に此の2人がチョロチョロ現れ、彼等と関係が在りそうな人物が、次々に不審な死を遂げるというのが、大まかなストーリー。

 

此の小説が地方紙連載されていたのは、1959年から1960年に掛けて。今から55~56年前の事だ。携帯電話なんて当然無かったし、固定電話ですら誰もが持っていた時代では無かった事が、文章から読み取れる。田代が運送店や駅で、“着止め”で送られた“他人”の荷物に付いて、担当者に送り主の名前や住所、中身等を尋ねる場面が在るのだが、担当者は皆、田代の素性を確認する事も無く、“個人情報”を“普通に”明らかにしている。今の時代なら、絶対に在り得ない設定だろう。

 

そういった状況面での古さは在るものの、作品としての古さは全く感じられない。ミステリアスな展開にどんどん引き込まれてしまったし、流石、松本清張氏だ。

 

ストーリーのとなる“或る設定”、実は自分も同じ様な事を大昔に考えた事が在る。「此れならば、完全犯罪が達成出来るのでは?」と思ったものの、余りにも大掛かりな話なので、「現実的には難しいだろうな。」と思ったりもした代物勿論、清張氏の方が遥か昔に思い付いて記し、其れを自分が知らなかっただけなのだが。

 

非常に引き込まれる内容だっただけに、最後の展開には少々がっかりさせられた。御都合主義的で、安っぽいドラマの様な終わり方だったから。

 

総合評価は、星3.5個とする。


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