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8050(はち・まる・ごー・まる)問題:長年引き籠る子供と、其れを支える親等の関係性から、2010年代以降の日本に発生している「高年齢者の引き籠りに関する社会問題。」を指す。「80」は80代の親を、そして「50」は50代の子供を意味するが、此の子供達の世代は「バブル崩壊後の就職難に在った就職氷河期世代で在り、就職活動に失敗した者も多い。」のが特徴。彼等が若い時、行政は「自己責任だ。」、「(彼等の)親が面倒を見るべき。」等として、棄民の如く切り捨てた事も在り、「彼等が生活保護を取得する様になると、一気に社会保障費が増大する事。」が問題となっている。8050問題が顕在化した事件も発生。
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今回読んだ小説「ヒポクラテスの悲嘆」(著者:中山七里氏)は、「『ヒポクラテスの誓い』シリーズ」の第5弾。「浦和医大に勤める研修医・栂野真琴(つがの まこと)は、或る事情から法医学教室に入る事となり、教室の主で超変人の光崎藤次郎(みつざき とうじろう)教授、そして流暢に日本語を話すものの、時々変な諺や言い回し等を使う准教授のキャシー・ペンドルトンと共に、運び込まれた遺体を解剖し、意外な真実を明らかにして行く。」という法医学ミステリーだが、今回は「8050問題」(実際には其れよりも高齢だったり、若かったりするケースも在るが。)をテーマとしている。「プロローグ、5つの短編小説、エピローグ」という構成だ。
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「(前略)今全国で報告されている引き籠りの人口、どれだけか知ってるかい。」。「さあ、キャッシー先生によるとアメリカでは1千万人と聞いてますけど。」。「今年、内閣府が発表した推計だと40歳から64歳迄の中高年に限ってみても61万3千人。15歳から39歳迄が54万1千人。併せて115万4千人。飽く迄推計上の数字で、実際は其れよりもっと大勢の引き籠りが居ると考えて良い。或る 社会学者は150万人という数字を弾き出した。此れって沖縄県の全人口を優に上回るんだぜ。信じられるかい。然も若年層より中高年層が上回っている。」。
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考えさせられる内容では在ったし、解剖の描写もリアルで勉強にはなった。だが、謎解きという部分では物足り無い。大方、当てられたので。又、後味も良く無く、高い評価を与える事は出来ない。
総合評価は、星3つとする。