*********************************
・県警上層部に渦巻く嫉妬が、連続放火事件の真相を歪める。(「樹を見る」)
・出所した許りの累犯者が起こした窃盗事件の真実を抉る。(「罪を押す」)
・同級生を襲った現役警官による卑劣な恐喝事件に、検事の佐方貞人(さかた さだと)が真っ向から対峙する。(「恩を返す」)
・東京地検特捜部を舞台に、法と信義の狭間で藻掻く。(「拳を握る」)
・横領弁護士の汚名を着て迄、約束を守り抜いて死んだ男の真情を描く。(「本懐を知る」)
*********************************
小説「臨床真理」で第7回(2008年)「『このミステリーがすごい!』大賞」を受賞し、文壇デビューした柚月裕子さん。此の作品に関する自分の総合評価は、「星3.5個」だった。以降、彼女の作品は「最後の証人」(総合評価:星3つ)、「孤狼の血」(総合評価:星4.5個)、「慈雨」(総合評価:星3.5個)、「盤上の向日葵」(総合評価:星4.5個)、「合理的にあり得ない 上水流涼子の解明」(総合評価:星3つ)、そして「凶犬の眼」(総合評価:星3つ)の7作品を読んで来た。
今回読んだ「検事の本懐」は、柚月さんの「佐方貞人シリーズ」の第2弾。“辛い過去”を持つ検事の佐方貞人が、様々な謎を解き明かすというストーリーで、同シリーズを読むのは、第1弾の「最後の証人」に続き2作目。今回の作品では、佐方の辛い過去が次々と明らかになるが、中でも「本懐を知る」という作品が一番印象に残った。
「検事の本懐」は過去に読んだ事が無いのに、「拳を握る」という作品に関してはストーリーに覚えが在った。「何でだろう?」と不思議だったが、同作品を扱ったTVドラマを見たからだった。
収録されているのは、5つの短編小説。「短編小説は概して、長編小説と比べると“薄味”な物が多かったりする。」のだけれど、5つ共にそんな事は無く、読み応えが在った。“読ませるストーリー”というのも当然在るが、佐方貞人という人物のキャラクター設定が魅力的なのも、大きな理由だろう。
総合評価は、星3.5個とする。