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1人の女性のモノローグから、物語は始まる。登場人物が繋がって行く、複雑な人間関係。1章毎に、増えて行く相関図!一度読んだら、もう一度読みたくなる、パズルの様な群像劇!!
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第35回(2013年)小説推理新人賞を受賞した小説「スマドロ」(著者:悠木しゅんさん)。タイトルの「スマドロ」とは「スマートな泥棒」の意味で、「毎日の様に被害届けが出されているのに、其の正体等を一切掴ませない凄腕の泥棒。」という設定になっている。冒頭に記したのは、本の帯に書かれた惹句。
5つの章から構成された此の作品、其れ其れの章で1人の女性、即ち全部で5人の女性が独白するスタイル。湊かなえさんの登場以来、こういったモノローグ・スタイルの作品が増えている様に感じる。「新しい章に入ると、其れ以前の章に登場した人物達との関係性が、次々に明らかとなって行く。」というのは面白い。
唯、文章が御粗末。“悪い意味での”ライトノベルといった感じで、読んでいて苛ついてしまう。伏線の敷き方もピンと来ないし、最後のどんでん返しも想定内で、全く驚きは無かった。
今から35年前の1980年、田中康夫氏の小説「なんとなく、クリスタル」がベスト・セラーとなった。個人的には興味を惹かれなかった作品では在るが、印象的だったのは400個を超える註や分析が記されていた事。註等が記されていたのは、当時、流行していたブランドやレストラン等の固有名詞がメイン。「東京で生まれ育った、比較的裕福な若者でないと理解出来ない可能性が在る。」という事で、田中氏特有の視点から記された物だった。
「スマドロ」では、矢鱈と“今の情報”が記されている。「スッキリ!!」や「ZIP!」、「MOCO’Sキッチン」といった番組名&コーナー名の他に、ドラマで流行った台詞等が脈絡も無く、「此れでもか!」といった感じで出て来る。“今を生きている人”ならば判るのだろうけれど、“10年後の若者”が読んだら、「何だか判んない。」という事になりそう。流行りを詰め込み過ぎるのも問題。