我が国で最初に発見されたのは22年前の1995年だそうだが、「咬まれたら危険。」という事で大騒ぎになったのは、9年前の2008年だった。当時は駆除の様子が良く報じられていたけれど、そんな背赤後家蜘蛛も今や日本に定着してしまった感が在る。
彼の時の騒動振りを重ね合わせてしまうのが、日本で次々と見付かっている火蟻。“アルカイド系の毒を持つ殺人蟻”という事で騒がれているけれど、少々騒ぎ過ぎな気もする。或る程度の駆除対策は、必要とは思うが・・・。
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「侵略的外来種『火蟻』より恐ろしいのは『和布』?」(7月15日、Smart FLASH)
7月13日、環境省は東京大井埠頭のコンテナに於て、火蟻100匹以上を発見したと発表。卵や幼虫も確認されたと言う。6月に兵庫で確認されて以来、生息エリアがどんどん拡大している。
火蟻は国際自然保護連合(ICUN)によって、「世界の侵略的外来種ワースト100」に選ばれている。此れは、外来種の中でも、特に生態系や社会への悪影響が大きい生物のリストで在る。
火蟻は、南米から日本への外来生物という事になるのだが、同リストには、此れとは逆に日本から世界中へ広がっている悪玉外来生物が掲載されている。
其れは何と、味噌汁に欠かせない「和布」だ。ICUNによれば、和布は日本、韓国、北朝鮮の近海が原産地で、アメリカ、フランス、イタリア、オーストラリア、ニュージーランド、黒海、地中海等、世界中で繁殖が確認されている。
実害として、和布が牡蠣、帆立、ムール貝等の養殖魚介類の成長を阻害したり、漁業用の機械が詰まったりする等、重大な影響を及ぼしていると言う。
和布が世界へ拡散したのは、タンカーのバラスト水が原因だと言われている。バラスト水とは、タンカー等の貨物船が積荷を降ろした後に、帰路で船を安定させる為、重石として入れる海水の事。海水の中に含まれた和布の胞子が、日本から世界へ広がってしまったのだ。
其れにしても、和布はそんなにも繁殖力が強いのか。「春先から6月に掛けて、波の無い場所の防波堤等に繁殖しています。」(「のとじま水族館」の藪根哲志さん)
海水温度が20度以下で、波が無ければ、容易に自生すると言う。和布の唯一の天敵は海胆なのだが、海胆の方が繁殖力は弱い。和布と一緒に海外へ運ばれたとしても、海胆は其処で繁殖する可能性は低い。そうなると、敵無しで繁殖してしまう。外国では和布を食べないので、減る事も無い。
「和布が侵略的外来生物に選ばれている事は、我々も知りませんでした。外から入ってくる生物には敏感でも、自分達の側が出す事に関しては、考えが及ばない物ですね。」。(同上)
実際の所、火蟻に刺される可能性は低く、重症化するケースは少ないとされる。其れに比べたら、和布被害の方が遥かに大きいと言えそうだ。現在の日本の火蟻パニックは、南米の人々の目にどう映っているだろうか。
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7年前の記事「外来種」で触れた様に、「アメリカではアジア圏から持ち込まれた葛が大繁殖(繁殖面積は、四国の約1.5倍。)し、処理の為に年間400億円以上が費やされている。」というが、同じアジア圏から和布が“悪玉外来生物”として、そんなにも海外に広がっているとは知らなかった。
我々日本人にとっては美味しい食材の和布だけれど、海外では食べる習慣が余り無いとか。日本食ブームが世界に広がっているので、和布を食べる習慣も広がれば、良い解決策になるのだろうけれど。