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若手刑事の小山田聡介(おやまだ そうすけ)は、おんぼろな西洋屋敷に、父・鉄二(てつじ)と家政婦のマリィと共に暮らしている。上司・椿木綾乃(つばき あやの)警部は39歳で、独身の美形という事も在り、聡介は密かに熱い思いを抱いているのだが、此の上司は大のイケメン好き。次々と殺人事件に巻き込まれる中、真犯人は皆イケメンで、綾乃は彼等を容疑者から除外してしまうという悪癖が。
そんな困った上司や頼りない部下に囲まれた聡介は、結果的に難事件を解決して行く。其れは全て、マリィの御蔭。実は彼女は魔法使いで、其の魔法によって聡介は、事件解決の糸口を得ていたのだ。
聡介に恋心を抱くマリィは、4つの殺人事件に直面し・・・。
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今回読了した小説「さらば愛しき魔法使い」は、東川篤也氏が著す「魔法使いマリィ・シリーズ」の第3弾。東川氏と言えば、2006年以降の年間ミステリー・ランキングで作品が上位に入っている作家。代表作は、ドラマ化もされた「謎解きはディナーのあとでシリーズ」。
彼の作品は何冊か読んでいるが、6年前の記事「謎解きはディナーのあとで」の中でも書いた様に、其の作風は、自分が若かりし頃に読み漁っていた赤川次郎氏の作風にとても似ている。
「魔法使いマリィ・シリーズ」を読むのは今回が初めてで、矢張り「赤川作品に、雰囲気が似ているなあ。」と。赤川作品には「吸血鬼シリーズ」というのが在るけれど、「コミカルさは其の儘にして、主役を吸血鬼から魔法使いに変えただけ。」という感じか。驚いた時には「ドキッ!」とか「ギクッ!」とか口に出す文章なんぞは、意図的に書いているのだろうが、個人的には冷めてしまう。
「真犯人は皆イケメンで、彼等を容疑者から除外してしまうという悪癖を持つ綾乃。」というキャラクター、「二番煎じだなあ。」と感じてしまったのは、2年前に見ていたドラマ「婚活刑事」の主人公・花田米子が、「大阪府警本部勤めの彼女は、好きになった男性が全て犯罪経験を持って警察に逮捕された者許り。」という設定だった為。気になって調べた所、「婚活刑事」の原作は2014年8月に第1弾が刊行されているのに対し、「魔法使いマリィ・シリーズ」の第1弾は2012年9月に刊行となっており、少なくとも「婚活刑事」の二番煎じでは無かった。
とは言え、赤川作品の雰囲気に非常に似ている事等、全体的に二番煎じ感を強く感じてしまう。「魔法使いと聖夜の贈り物」及び「魔法使いと血文字の罠」という作品で、謎解きの鍵となるグッズのチョイスに「面白い所に目を付けたなあ。」と感心はしたが、「数年後でも覚えている作品か?」と問われると、「否。」と答えるだろう。
総合評価は、星2.5個とする。