アーサー・コナン・ドイル氏がシャーロック・ホームズを、そしてアガサ・クリスティー女史がエルキュール・ポアロを生み出さなかったら、“ミステリー”が今程、世界中に普及していなかったと思う。其れだけ、両キャラクターの存在は大きい。
世界に与えた影響は然程じゃ無かったにせよ、「日本で生み出され、そして少なくとも日本のミステリー界に大きな影響を与えたキャラクター2名。」となると、自分は江戸川乱歩氏の明智小五郎と横溝正史氏の金田一耕助を挙げたい。
経歴を見ると、金田一耕助が生まれたのは1913年。“最後の将軍”で在る徳川慶喜が亡くなった年で在り、もし耕助が存命ならば、今年で101歳という事になる。
横溝作品のおどろおどろしい雰囲気が大好きで、少なくとも金田一耕助物は全て読んでいる。又、原作を映像化した物も、其の多くを見て来た。TVドラマ版で言えば「古谷一行の金田一耕助シリーズ」が秀逸で、特に1970年代に放送された「横溝正史シリーズⅠ・Ⅱ」は夢中になって見ていた。
映画版で言えば、「石坂浩二の金田一耕助シリーズ」が断トツに良い。金田一耕助を演じる石坂浩二氏が嵌まっているし、脇役も味の在る役者が顔を揃えている。そして何よりも、全6作品(リメークされた「犬神家の一族」が重複している。)を担当した市川崑監督の“テクニック”が冴え渡っている。「光と影を駆使した、息を呑む様な映像美。」に加え、「素早いカット割りや台詞を被せて畳み掛ける事で、緊張感とスピード感を出す演出。」が堪らなく好き。
今日は、「金田一耕助作品のベスト5」を選ぼうと思うが、小説よりも映像化された作品に重点を置いて選ぶ事にした。なので、小説だけならば多くのミステリー・ファンが上位に選ぶで在ろう「本陣殺人事件」が、ベスト5に入っていなかったりする。
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「金田一耕助作品ベスト5」
1位:「八つ墓村」
「石坂浩二の金田一耕助シリーズ」を激賞しておいて何だが、野村芳太郎監督の作品で、渥美清氏が金田一耕助役を務めた「八つ墓村」を1位にした。「津山30人殺し事件」という猟奇的な事件を下敷きにし、兎に角怖さを感じる作品。闇に包まれた洞窟内を、狂気の面相で駆け回る小川眞由美さんの姿は、今も忘れられない。
2位:「犬神家の一族」
此方で書いた様に、市川崑監督のテクニックが、最も堪能出来る作品と言って良い。犬神佐清のマスク姿が、実に不気味だった。
3位:「悪魔の手毬唄」
アガサ・クリスティー女史の名作「そして誰もいなくなった」と同じ「見立て殺人」が光る。
4位:「獄門島」
此の作品も、「見立て殺人」を扱っている。俳句を用いた見立て殺人で、「キチガイじゃが、仕方無い。」という言葉が大きな意味を持っていた事が後になって判り、「こんな設定を、良くも考え出したなあ。」と感心する。
5位:「病院坂の首縊りの家」
小説自体はそんなに高く評価出来る内容では無いのだが、此方に詳細を記した様に、映画のラスト・シーンが実に素晴らしい。
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映画化された金田一耕助作品の中から、インパクトの在った脇役ベスト3を選ぶと。
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「金田一耕助作品に登場する、インパクトの在った脇役ベスト3」
1位:犬神佐清(「犬神家の一族」)
2位:「栗林りん」を名乗る謎の老婆(「悪魔の手毬唄」)
3位:「濃茶の尼」と呼ばれる妙蓮/田治見小竹&小梅(共に「八つ墓村」)
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