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「『交渉一旦打ち切るべきだ。』強硬論も・・・自民部会で領土交渉への懸念相次ぐ」(1月29日、毎日新聞)
安倍晋三首相とプーチン露大統領の22日の会談を受け、29日に開かれた自民党外交部会・外交調査会合同会議で、政府の交渉姿勢に対する懸念の声が相次いだ。日露交渉では、北方領土を巡る歴史認識の相違が表面化。会議では「交渉を一旦打ち切るべきだ。」と強硬論も出る等、交渉を急ぐ首相への異論が浮き彫りになった。
会議では外務省幹部が日露平和条約問題等に付いて協議した首脳会談の概要を説明。通訳のみを交えた1対1の会談は、「全て平和条約に関する物で、首脳間で突っ込んだ議論が行われた。」とし、今後も両国の外相間等で、更に交渉を進めるとした。
唯、日本政府が北方領土は「ロシアによる不法占拠。」との立場を取るのに対し、ロシア側は「第二次大戦の結果、合法的に手に入れた。」との姿勢。出席議員からは「ロシアの歴史認識は認められない。」、「ロシアの主張を認めれば、日本の国際的地位に関わる。一旦交渉から撤退すべきだ。」との意見が出た。
又、日本政府が歯舞、色丹両島の返還に国後、択捉両島での共同経済活動等を組み合わせた「2島返還プラスアルファ」での決着を探っている事に付いても、「基本は、4島返還を目指すべきだ。」と疑問の声が上がった。一方で「安定した政権基盤を持つ安倍首相とプーチン氏なら、必ず領土問題を解決へ動かせる。」とエールを送る意見も在り、今後の党内論議は、難航も予想される。
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過去に何度か書いているが、「中国や韓国、北朝鮮等、信頼を置く事が出来ない国は幾つか在るが、中でもロシアは、最も懐疑的な目を向けなければいけない国。」というのが自分のスタンス。
「1941年に日本と(ロシアの前身たる)ソ連との間で『日ソ中立条約』を締結するも、第二次世界大戦で日本の敗色が濃厚となると、『連合国側に加われば、日本の領土を奪える等、漁夫の利を得られるぞ。』と一方的に条約を破棄し、1945年8月8日(日本が玉音放送で、終戦を表明する7日前。)に突然宣戦を布告。日本の領土に攻め入って来た。」事等、ソ連時代からロシアは“約束を守らない国”という印象が強いし、又、“戦時中の兵士の狼藉”というのは、日本を含めて多くの国で見られる事だけれど、「ソ連の其れは、筆舌に尽くし難い程に残虐なケースが目立つ。」事も、ロシアに信頼を置けない理由だ。(勿論、「ロシア人全てが悪い人間。」と思っている訳では無い。)
ソ連時代からの歴史を見れば、此の国は「自分の周りを“味方”で固めないと、不安で仕方無いという思いが、“異常な程”強い国。」なのが判る。そんな国が、北方領土を“放棄”する訳が無い。
強かなプーチン大統領故、「“日本の未来”なんかより、自分の名前を歴史に刻む事にしゃかりきになっている様な安倍首相の心の内。」をすっかり見透かしていると思う。「『甘い顔を見せたと思ったら、厳しい顔を見せる。』といった駆け引きで、日露平和条約を締結させ、次に共同経済活動等で日本から莫大な金を分捕る。結局、“実質的”には1島たりとも放棄しない。」という形に終わるのではないか?そうなったら、日本の外交は完全な敗北だ。
日本政府は一貫して「北方4島は日本の領土で在り、4島全ての返還を求める。」というスタンスだったのに、今や「2島返還でOK。」といった感じになっている。沖ノ鳥島や竹島、尖閣諸島の領土問題では苛烈な程に“相手”を批判している人達が、“北方領土問題に関する安倍首相の阿り”には、非常に寛容なのが不思議でならない。彼等が好んで使う言葉を借りるならば、“売国行為”としか思えないのだが。
人間も国家間も近いほど利害関係が複雑になるから、いったん疑心が生じると修復に多くの時間と労力が必要になる、ということはあると思います。
中国、朝鮮とともにロシアも信用できない国、というお考えに同感ですが、日本もかつては第一次世界大戦で、参戦すべき明確な理由を持たないままドイツに宣戦布告し、それまでドイツに統治されていた南洋諸島を(漁夫の利)で手に入れた経緯があるし、当のドイツもナチス政権の時代に独ソ不可侵条約を一方的に破ってソ連に侵攻した過去があり、その時の日独伊三国同盟のひとつが日本だったわけですね。
なのでソ連=ロシアだけが「約束を守らない信用できない国」とは言えないように思います。
北方4島、尖閣諸島、竹島などの領土問題を考えるとき、国内では歴史認識として「当然日本古来からの疑いようのない領土」と捉えていますが、相手の当事国ではない第三者としての諸外国は、この「歴史認識」をどう解釈してみているのか、それが気になります。
国際社会で日本がどのような国とみられているか、という事は大事な事でしょう。
外交の基本であり醍醐味でもある交渉術は、単に当事国である相手国との間の駆け引きだけでなく、世界の第三者国、とくに国際的に発言力の強い国をどれだけ説得して、より多く自陣に引き入れるかという事でもあると思いますが、どうも我が国はその点の外交術がお粗末ではないかと思えます。
最近の韓国との諸問題の件でも、条約を守り証拠もあって正論を言っているから非は相手側にある、との政府の論調は、国内向けにはそれでよいとしても、利害の当事者でない国際世論も納得させられるように、積極的にアピールしていかないと、いつの間にかうやむやにされて、「侵略先でひどいことをした挙句敗戦した国」という負の遺産だけをいつまでも背負うことになりはしないかと危惧します。
領土問題とは次元が違いますが、最近の捕鯨の国際機関からの脱退宣言は「自分の意見が通らないときは国際世論に背を向ける国」と、自ら宣言しているようにも見え、大きなマイナスでしょう。理屈が通らない相手でも、手を変え品を変えてでも粘り強く食い下がり続ける、その間に味方を増やす、それも外交だと思うのですが。
第一次世界大戦時の日本、確かに書かれている様な面は在りますね。戦争中には日本“も”好ましくない事をしていたと思うし(証言や証拠等から判断して。)、「ソ連(ロシア)“だけ”が、約束を守らない信用出来ない国という訳では無い。」というのも、其の通りだと思います。
「捕鯨の国際機関からの脱退宣言」、自分も悠々遊様と同じ捉え方をしておりました。嘗て「国際連盟から日本が脱退した。」(https://kotobank.jp/word/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E9%80%A3%E7%9B%9F%E8%84%B1%E9%80%80-64011)時と似た感じがしたからです。
範疇を広げ過ぎてしまうと話が判り難くなってしまうので、韓国に絞って話をすると、韓国は確かに“愉快な隣人”とは言えないけれど、「他国に対しては、日本に対して“程”に、理不尽な事を主張しないのは何故か?」という観点を考える必要が在ると思うのです。日本政府が過去の問題に謝罪をしているのは事実だけれど、謝罪の後に然るべき立場の人間が「日本は全く悪くなかった!」みたいな妄言を繰り返すから相手に付け入る隙を与えてしまうのだし、韓国側からすれば「日本は昔と同様、欧米諸国には遜るけれど、アジア圏の他国は下に見ているからこそ、ああいう発言をするのではないか?」という思いが出て来るのも理解出来るんです。(韓国の理不尽な主張に腹立たしさを覚えるのは、自分の中にも在りますけれど。)
「相手の立場になって考える。」、言うは易く、行うは難しですが、日本人、特に極端な思考を持つ人達は概して、そういうのが苦手な気がしますね。