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大学生の関口藍(せきぐち らん)は、前世・前前世の記憶を所持して生まれて来たという少女・伊藤杏寿(いとう あず)と出会い、「生まれ変わりを防ぐ手助けをして欲しい。」と頼まれる。
情報を得る為、前前世の少女・神山木綿子(かみやま ゆうこ)の生家を訪ねた藍達は、其処で謎のポルターガイスト現象に遭遇する。其の翌朝には当主・昌一(しょういち)の毒殺死体が発見され、現場には木綿子の署名が残されていた。32年前、彼女は何者かに殺害されたらしく・・・。
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第16回(2017年)「『このミステリーがすごい!』大賞の隠し玉に選ばれ、昨夏上梓された小説「三度目の少女」(著者:宮ヶ瀬水さん)は、前世&前前世の記憶を所持して生まれて来たという中学一年生の少女・伊藤杏寿が主人公。彼女によると、前世は都倉水奈(とくらみずな)、そして前前世は神山木綿子という女性だったと言う。彼女等3人の共通点は、誕生日が皆「2月17日」で在り、又、家族に恵まれていないという点。木綿子は何者かによって12歳で殺害され、そして水奈はトラックに轢かれて18歳で亡くなったと。自己犠牲を強いる何者かの声が頭の中に聞こえて来る杏寿は、「自分も2人の様に、若死にするのではないか。」という不安を抱いている。
小説の冒頭には、「この物語において、以下の条件を真とする。『この世には、超常現象が存在する。』」と記されている。詰まり、「三度目の少女」の中では「現代科学で解明されていない不可思議な現象も、全て存在している。」という大前提で読み進めなければいけないミステリーなのだ。
「全てが超常現象で片付けられてしまうと、謎解きの上で面白味が無くなってしまう。」ので、謎解きに関してはそういう物が介在していない。けれど、杏寿が本当に2人の女の子の生まれ変わりなのかどうかに付いては、非常に微妙な“解釈”となっている。「何事に関しても“現実的な考え方”をするのが好きで、且つオカルト系の設定が苦手な人。」には、此の作品は御薦め出来ない。
関口藍と伊藤杏寿が“結び付けられた理由”もそうだが、少し無理を感じる設定が幾つか存在する。そういった部分に、自分はどうしてもモヤモヤ感が在った。
総合評価は、星3つとする。