プロ野球に興味を持って以降、一貫してジャイアンツ・ファン。「此処ぞという場面で、ホームランを打ってくれる王貞治選手。」に魅了され、大のジャイアンツ・ファンとなったのだ。ジャイアンツ・ファン歴は、もう半世紀を超える。
そんな自分だが、ジャイアンツ・ファンを止めたくなった事が何度か在る。止めたい気持ちがマックスに達したのは、1988年の事。大好きな王貞治氏は既に選手を引退し、ジャイアンツの監督を務めていたが、監督5年目の此の年、優勝出来なかった責任を問われ、石もて追われる形で解任されたのだ。前年の1987年は優勝を果たすも、1988年は2位に終わったジャイアンツ。一時は続投させる様な素振りを見せるも、一転して解任に走ったジャイアンツのフロント。チームの大功労者に対する余りの仕打ちに、怒りを抑え切れなかった。でも、王監督が育てて来た選手達が居るジャイアンツを、自分は見捨てられず、ジャイアンツ・ファンに留まる事に。
以降、ジャイアンツ・ファンを止めたいと思ったのは、「大好きなジャイアンツ関係者が、理不尽な形でチームを追われた時。」で、2018年に内海哲也投手がチームを追われた時もそうだった。此の年のオフ、ジャイアンツは国内FAを宣言をしたライオンズの炭谷銀仁朗選手を獲得し、其の人的補償として内海投手のライオンズへの移籍が決まったのだ。「投手としての全盛期は過ぎていたし、ライオンズに移籍して以降の彼の成績を考えれば、人的補償の対象選手に彼をジャイアンツが入れていたのは、“戦略的”に間違っていなかった。」とは思う。だが、「ジャイアンツというチームを誰よりも愛し、エースとして牽引して来た選手に対する対応として、ジャイアンツに許し難い気持ちを抱いた。」のだ。
ライオンズに移籍して4年目のシーズンが終わろうとしている中、内海哲也投手の引退セレモニーが19日、ベルーナドームで行われた。「熾烈な優勝争いをしている状況なのに、内海投手を先発させ、1人の打者だけとはいえ対戦させてくれたライオンズ。」には、彼をずっと応援して来た人間として、唯々感謝の思いしか無い。
又、内海投手がプロ入り(ジャイアンツ入り)した際の監督・堀内恒夫氏と、ジャイアンツ時代の最後の監督・高橋由伸氏(内海投手がライオンズに移籍した2018年オフ、矢張り彼も解任されている。)おの2人が、ジャイアンツ関係者としてセレモニーに呼ばれていた事にも、ライオンズというチームの優しさを痛感させられた。
4年前、内海投手がライオンズに移籍した際、堀内氏は自身のブログ「今日もどこかであくたろう」に、「内海哲也へ」という記事を書いている。現役時代から小憎らしい言動が目立ち、正直言って余り好きにはなれない堀内氏だったが、彼の優しさ溢れる人柄を感じ、当ブログで「“悪太郎”を見直した」という記事にした。「内海哲也へ」から、一部を抜粋する。
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君のコメントも聞かせてもらったよ。
君自身にとっても「突然のこと」で、気持ちの整理がつかないまま、メッセージを出したんじゃないかと、俺は思うよ。
そんな状況の中で、とっても立派なコメントだったじゃない。
ただ、ただね、ひとつだけ気になった部分があったんだ。
「将来的には、ジャイアンツに帰ってこれるように・・・。」。
気持ちは痛いほどわかるよ。でも、今はそんなこと言っちゃダメよ、内海。西武のために頑張る。それは、西武に骨を埋める。西武のユニフォームで現役を終える。今はそういう気持ちを持って、行かなくちゃな。
俺の言いたいこと、お前ならわかるよな、内海。がんばれよ、内海!応援してるからな、内海!
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「“悪太郎”を見直した」の中でも書いたけれど、「『将来的には、ジャイアンツに帰ってこれるように・・・。』と、今言ってしまうのは、ライオンズの選手達やファンの方達に対して、非常に失礼な事で在り、そういう事は言っちゃ駄目だよという思いをやんわりと伝えると共に、「ライオンズ・ファンにも可愛がって貰える様になって欲しい。」という堀内氏の“温かい思い”が伝わって来る名文だった。
で、引退セレモニーで内海投手に花束を手渡した堀内氏は、次の様にスピーチした。(此の時の様子は、「今日もどこまであくたろう」に、「内海哲也 引退セレモニー」というタイトルで記されている。)
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内海は、私が(監督として)関わった最後の選手です。是非、「御疲れ様。」を言いたくて、此処に来ました。そうしたら、粋な計らいが在った。大事なペナント・レースの最中に、先発をさせてくれると言う。此れは辻監督を始め、西武球団の皆様に感謝申し上げたい。此れが、野球選手冥利に尽きるという事ではないでしょうか。本当に良い球団に、良い人達に恵まれて野球が出来た事が幸せ。」。
「未だ君には、此れから君の技術、経験を若い選手に伝えていって第2、第3の内海を育てて欲しいと思います。其れも、此の西武ライオンズで遣って欲しいと思います。短い4年間では在りましたが、西武ファンの皆様、内海を可愛がって戴き、有り難う御座いました。」
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「ジャイアンツでは無く、ライオンズで指導者として第2、第3の内海を育てて欲しい。」というのは、大事な内海投手を“看取って”くれたライオンズに対する、心からの感謝の思いだろう。又、「短い4年間では在りましたが、西武ファンの皆様、内海を可愛がって戴き、有り難う御座いました。」の部分では、堀内氏は涙声だった。「内海を可愛がって戴き」という部分に、堀内氏の温かい人柄が感じられ、思わず自分も涙してしまった。
内海哲也投手、19年間のプロ生活、本当に御疲れ様でした。エースとしてジャイアンツを牽引してくれた事、ファンとして感謝の一言しか在りません。今後は指導者として、多くの後進を育てて下さい!!