人の口に戸は立てられぬ

「入試ネット漏洩事件」は、１９歳の男子予備校生が犯人として逮捕された。真面目に受験した人達が馬鹿を見るという世の中で在ってはならないし、逮捕された彼が批判されるのは当然の事と思う。しかし世間を騒がせたとは言え、カンニング行為を「偽計業務妨害の容疑で逮捕」というのは、個人的に「どうかなあ？」という思いが無い訳では無い。（「自殺の恐れ在り。」という事で、身柄確保の意味合いも在ったのだろうけれど。）「高３の時に父親を亡くし、『母親に出来るだけ負担を掛けたくないので、授業料の安い国立大学に何としても入らなければ。』という思いが背景に在った。」と言われており、其れだからと言って今回の行為が許される訳では無いのは確かだけれど（同じ様な境遇でも、正々堂々と受験している人は居るだろうから。）、「精神的に相当追い込まれていたんだろうなあ。」と同情してしまう面も在るので。「不正を働いた試験は全て不合格とする。」という形で灸を据え、後は周りが彼を温かく見守って欲しいと思う。ネット上で彼の個人情報を晒し上げる様な下種な連中が現れない事も、合わせて望む所。

 

今回の件では、大学や警察の対応に賛否両論出ている様だ。脳科学者の茂木健一郎氏は京都大学やマスメディアの対応を批判しているのだが、「京都大学、御前は死んだ！」や「日本のクズメディア、予備校生が逮捕されて満足か？」、「御前等が、日本を沈ませている。」等々、余りにも感情的な主張には正直引いてしまう。大学や警察の対応に疑問を呈する気持ちは理解出来るけれど、「数年間も税務署から申告を求められていたのに一切無視し続け、約４億円の申告漏れで追徴課税を受けた挙句に、『忙しさに追われて申告出来なかった。』なんぞとしゃあしゃあと言ってのけた悪質極まり無い脱税者。」から、大学やマスメディアも批判されたくは無いだろう。国家の基盤たる税金を支払わないのは、「日本を沈ませる」事にはならないのだろうか？「目糞鼻糞を笑う」という喩えを思い浮かべてしまうのだが。脱税で騒がれた憂さを、今回の件で晴らしているだけにも思える。

  

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「警察公表前にネットで情報拡散　熊本・女児遺棄事件」（３月５日、朝日新聞）

 

熊本市で３歳の女児が行方不明になり、遺体で見付かった事件では、簡易投稿サイト「ツイッター」で、被害者の着衣の特徴等、事件に関する書き込みが相次いだ。

 

熊本県警が記者会見をして、事件が明るみに出たのは４日午後３時１５分。其の約６時間前の午前９時頃と見られる投稿では、子供が熊本市内のスーパーで３日午後８時頃に行方不明になった事実関係が書き込まれた上で、「ツイッター上で呼び掛けて。」と記されていた。

　

「熊本市内の皆様へ」の書き出しで始まる別の投稿では、「身長１００センチ・髪肩迄・上が白で赤ちゃん柄。」等、清水心（ここ）ちゃんの背格好や着衣の特徴を記した上で、「ビッグザビッグで１９時３０分頃不明。見付けられたら警察迄。」としていた。「先程会社に警察の方が来られて。」という書き込みも在った。

 

誘拐事件が発生した時、被害者の安全を確保する目的で、警察は報道機関に取材や報道の自粛を求める場合が在る。熊本県警の要請を受け、地元の報道各社は４日午前から協議を始めていた。

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幼子の命を奪われた御遺族の心中は、察するに余り在る。犯人として逮捕されたのは２０歳の大学生だったが、面識も無いと思われる幼子の後を付け、「騒がれたから。」という理由だけで即座に殺害したという所に「快楽殺人」の匂いを感じてしまう。鬼畜の所業としか思えないし、殺人が事実を判明した場合には厳罰に処して貰いたい。

 

誘拐の可能性も考えられる行方不明者が出た場合には、情報統制は重要と思う。関連情報が漏れる事で犯人を刺激し、被害者の身に危害が及ぶ可能性は高いだろうから。今回のケースは「善意からの呼び掛け」と思うが、「悪意からの情報流出」、又は「善意を装った情報流出」が、今後は多く出て来るのではないかと懸念する。

 

「人の口に戸は立てられぬ」と言う。「情報統制がされていても、警察の聞き込みで“事件”を知り、周り近所の人に話してしまった。」というのは昔も在ったと思うけれど、インターネットが普及した今は「情報の拡散」は昔の比では無い。個々のモラルに任せるべき問題なのだろうが、捜査に著しい支障を来す事態が生じれば、法律に基づいた厳罰化も止むを得ないのかもしれない。