狂い咲きサンダーロード

８０年／日本／９８分／劇場公開
監督：石井聰亙
出演：山田辰夫、戒谷広、大池雅光、中島陽典、上谷忠、小林稔侍、南条弘二

＜ストーリー＞
幻の街サンダーロードを舞台に、権力に取り込まれた暴走族や右翼に戦いを挑む特攻隊長の姿を描く。
＜感想＞
石井聰亙作品の中でも、一番カルト的人気を博しているのが本作。
ようやくレンタルでＤＶＤが初お目見えですよ。

今観れば映画学校生が撮ったようなショボくて内容が薄い作品でしょうけど、なんちゅうの？監督の当時の若さゆえの

「滅茶苦茶な映画撮ったるゾ！」

みたいな情熱が猛烈に爆発していて、その熱気がムンムンと画面から伝わってくるんですよ。
こういう低予算だけれど、役者・ストーリー・セリフ全てが暴走し過ぎた作品って、何かこう観ていて目が離せなくなるし夢中になれるんですよね。

ラストの多数の暴走族と右翼を相手にたった一人で銃撃戦に持ち込むシーンなんて、爆発にしろ、演出にしろ、演技にしろ、小道具にしろ（バズーカ砲ね）、ホントどうしようもないんだけれど、

「ここは皆で盛り上げたるゾ！」

的な想いが凄くて、何度も観たくなる愛らしさがあるよね。

映画は情熱と意欲だけじゃ出来ないとは分かっているけど、本作でそれを言っちゃあ野暮でしょう。
むしろそれらが逆に変なパワーを引き出し、一部の愛好家のマストアイテムになっちゃっている。
公開してから２０年以上も経つというのに、今でもこうしてカルト的な傑作として伸し上がり語り継がれているのだから、やっぱり映画作りは金かけるより愛情だよ、マジで。

にしても本当危なっかしい作品やね(笑)。
シャブを打つガキ（ボカシ付き）、スーパー右翼（なんじゃそりゃ）、「君が代」を歌いながら登場する小林稔侍（最高！）、加え色男とベッドインしている小林稔侍（ホモい！）。

今の小林稔侍が魔墓狼死に見えるよ。
でもなんか・・・渋い・・・。

評価：★★★★
０９／０３／１６ＤＶＤ鑑賞
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おろち

０８年／日本／１０７分／劇場公開
監督：鶴田法男
出演：木村佳乃、中越典子、谷村美月、山本太郎、嶋田久作

＜ストーリー＞
美が崩壊する運命を持つ姉妹の壮絶な争いと、彼女らを見守る謎の美少女おろちの姿を描く。
＜感想＞
独特な画風と異質なストーリー故に最も映画化が難しいと言われている楳図かずおの漫画。
これまで彼の漫画は幾度となく映画化されてきたが、お世辞にもどれも出来は良くなかった。
まぁ私が観た作品は『神の左手　悪魔の右手』位なのだが、あれは酷かった(笑)。色んな意味で。
（難癖つけているけど、原作漫画は全く読んだこと無いとひっそりカミングアウト）
本作に関しても、原作は知らないし、書店で見た事もない、存在自体知らなかった愚か者です私は。

この謎の女おろちは一体何者？
特に何かをする訳でもなく、見守るだけの存在？
彼女がどのような位置に値するのかはっきり分からないだけにどうも感情移入出来ず、作品に入り切れない。
これが原作を読んでいないが故の損なのか・・・。

美を保つ
美が崩壊する

対極のテーマを扱ってはいるが、難解さは無い。
前半と後半とではガラッと雰囲気が変わり、特に後半部分のドロドロとした展開には恐ろしさの中に悲しみや嫉妬、陰謀が渦巻きかなり面白かった。

二役を演じた木村佳乃の前半の美貌の中にも見え隠れする傲慢さ、そして後半の事実を知らされた事で精神を崩していき、果てに美をも崩していく危なっかしさ。
色んな表情をさらけ出した彼女の演技にも素晴らしさを感じました。

けど、流れを追っていると、少し単調な部分も感じ、退屈さを抱いてしまうのが惜しい。

と、これはおろちが去っていく終盤までに思った事で、ラストには予想外などんでん返しが用意されており、この強烈なオチには、眠っていた顔面を思いっきり叩かれて起こされた程の驚きがありましたよ！

これがあって、この映画に対する評価も変わったと言ってもいいです。
これが無ければ平平凡凡で終わっていただろうなぁ。

原作を読んだ人は、このオチは分かっていたのかな？
だとしたら読んでいなかった事に対しての後悔が、ここで初めて安堵に変わりましたよ。

オフィシャル・サイト

評価：★★★☆
０９／０３／１６ＤＶＤ鑑賞
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