パソコンやスマホの普及で、腕を酷使する人が増えている。腕の痛みやだるさの改善に有効なのが、中医学に起源を持つ「腕もみ」だ。腕にあるツボを幅広く刺激するだけで、全身の不調の解消も期待できるという。
猫背で長時間パソコン作業をしたり、寝っ転がってスマホを操作したりする習慣の人は多い。スマホやパソコンの利用増で「腕の不快感や鈍痛をはじめ、頭痛や目の疲れ、息苦しさや胃腸の不調を訴える患者はここ2、3年で2倍近くに増えた」と東京中医学研究所(東京・千代田)の孫維良所長は話す。悪い姿勢が、腕や肩に限らず内臓など他の部位の不調も招くという。
現代人ならではの不快感や痛みを、自分で気軽に解消できるようにと孫所長が考案したのが腕もみだ。ベースにしたのは中国伝統医学の「推拿(すいな)療法」。腕にあるツボや気の通り道である「経絡(けいらく)」に刺激を与えて、滞った流れを改善し、だるさを緩和するのが特徴だ。
やり方は簡単だ。腕もみは腕やひじを使って反対側の腕に体重をかけるだけ。「長く強く押しもみができ、刺激が深く浸透する」と孫所長は解説する。指を使うツボ押しは不慣れだと指を痛めやすく、ツボを正確に押すのも難しいが、その問題もない。
基本のやり方は、膝が90度に曲がる程度の高さのイスに座り、手のひらを上にして、右腕を同じ側の太ももに乗せる。右肘を曲げると内側にできる線の上にある「尺沢(しゃくたく)」のツボに左腕を当て、体重を掛けて前に向かってグーッと5秒ほど押す(イラスト左上)。続いて左腕の位置を手首方向に少しずつずらしながら、腕全体をグーッと押していく。腕を裏返して同様に押しもむ。軽い痛みがツーンと響くのが、滞った気が流れ、ツボが対応する部位の改善を促すサインだ。
スマホ操作で指を酷使する人は、人さし指に伸びる経絡の線を意識して押すと、張りが出やすい右手の親指が楽になる。親指と人さし指の間にある「合谷(ごうこく)」のツボは肩こりに、肘を曲げてできるシワの外側から手首寄りのツボ「手三里(てさんり)」は腕の疲労回復に効く。パソコン作業中に、キーボードの手前のスペースに腕をのせて押すのも手軽で効果的だ。
腕に集まる重要なツボを刺激することで、内臓にも好影響を及ぼすと中医学では考える。「腕全体をもむことで、蓄積疲労や全身の不調にアプローチできる」(孫所長)。例えば手首を曲げてできるシワから指3本分、肘寄りに位置する「内関(ないかん)」のツボを刺激すると、胃腸の痛みが緩和するといった具合だ。
実際に「重度の便秘で悩む患者が『内関』などの腕もみを習慣づけたことで、下剤の使用が減った例がある」と語るのは、すばるメディカルクリニック(神奈川県横須賀市)で腕もみを診療に取り入れている片山弘文院長だ。自身も5年前に孫所長の治療を受けて、気力減退が改善した経験を持つ。片山院長は腕もみの作用を「ツボへの刺激が脊髄や脳から運動神経、筋肉に情報が伝わって反応が起きる、自律神経反射を介した症状改善では」と考えている。
頭痛や腕の痛みで鎮痛剤を飲む人も少なくないが、医療法人社団桃里会花園医院(埼玉県宮代町)の今井隆喜院長は「痛み止めの常用で、胃腸が荒れるなど別の不調を招くこともある」と指摘する。コリの緩和に薬剤と手技で対応した結果、大差はなかったという米国の研究報告もある。「自分でできる筋肉疲労の緩和法を試すのも一案」(今井院長)。自分の腕が頼りになる治療パートナーになりそうだ。
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