Sydney Yajima


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G.W.

2011-05-01 13:22:20 | Weblog
日本は、ゴールデン ウィークだね。

シドニーの日曜日は、五月の初めの日らしく、朝はやや雨がぱらついたが、今 こうして書いているこの時間 (シドニー時間で、午後1時半)僕は、シドニーハーバーを見下ろしながら、久々に晴れた空を満喫している。
なにもかも わすれて・・・
そうして 自分のバランスを大事にしたいと考えたんだ。

風は微風
南東から、さわやかに 乾いた風が 水面に白い馬を浮かび上がらせる。
潮騒と、ヨットの帆が風を受けて膨らむ音がする以外は、なにもない。

空気を肺いっぱいに 吸い込んでみる。

のどが渇いた。
薄く切ったレモンの浮かんだ 冷たい水の入ったグラスを持った。
グラスの表面には 水滴がついており、中には アイスキューブが浮いている。
飲めば、どれほど気持ち良いだろうと想像してみた。が、そうすることをしないで、顔の前に、グラスを持ち上げた。
そして、わざとあごの下から喉に向けて、ゆっくりとその水を垂らしてみた。
水は、あごのラインをたどって、夏に焼けた肌を喉から伝わり 十分に冷えた感触を与えながら、胸のほうへと シャツを伝わって広がっていった。
冷たい感覚が胸に伝わると、両方の腕をぎゅっと縮めてみる。胸の筋肉が、その動きを受けて膨れ上がり、水にしみた白いシャツは、真ん中に集まった。

続いてその水の入ったグラスを置いて、シャツの真ん中を引っ張り、
「濡れちゃった」と、言って笑ってみた。

ヘリコプターが、低空飛行を繰り返して近づいてくる。
空には、白い雲の切れ端が 去っていく夏を惜しむように、浮かんでいる。

もうすぐ 南半球には冬が近づいている。

海に向いたテラスで、ラップトップを開いて こうして景色を描いていると、生きていることは、悪いことばかりではないような気がしてくる。
いつの間にか、自分が誰なのかを忘れてしまっていたのかもしれない。

ノースヘッド と サウスヘッド (シドニー湾の入り口)に打ち上げる波しぶきを見ていると、若い頃 夢中になったサーフィンが懐かしい。

時間は、どんどんと過ぎていくけれど、もしかしたら、もうここで、最後の瞬間に来たのかもしれないな。
などと、想像してみた。
未来というのは、もうなくなってしまっていて、今は、地表を離れ 飛び立つ瞬間に向かって、残りの滑走をしている飛行機に乗っているかのような気がする。

それならば、それで 楽しめばいい。

友人のブライアンが、イーヴル(悪党)と名付けた もうすでに、年をとって よぼよぼで、歯のなくなってしまったポメラニアンを、ひざの下において、コーヒーを飲んでいる。
ポメラニアンは、その丸い目をきょとんとさせて、ブライアンからもらうパンの切れくずを、見上げた姿勢で待っている。
多分、こいつには、地震も放射能も関係ないんだろうな。

そう思うと、僕は、まったく違う岸辺に座っていて、そこで、自分の人生を生きているのだということが、ふと、現実に感じられて、ああ、そうか・・・それだけの ことなのか・・・と思ったりもする。

海はつながっているのだし、風もきっとどこかでつながっているのには違いないのに、あまりにも爽やかな空気は、どんどんと、現実をはなれ、僕を 遠く どこかのかなたへ飛ばしてしまうような錯覚さえ陥らせる。
おそらく すでに地球の反対側にいるというだけで、遠くへ飛ばされているには 違いないのだけれどね。

時々 こんな僕でも思うことがある。

なんで、オーストラリアに30年近くも住んでいるわけ?

夢を見ているような そんな気持ちで あっという間に30年経ってしまったような気もするし、そうでも なかったような気もするけれど・・・

 


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