母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

春のおぼろの

2013年04月27日 | 季節
灯りを消すと
薄明かりさす窓外には煌々の月あかり
見やる夜更けの西の空には
まことまん丸のお月さま
今は週末の麗しい夜なのだった

満月の照らす街は眼下に広がり
静かな眠りに落ちてはいるが
何やらさざめく声が聞こえる
見えない夜の生き物の
吐息がひそかにしている
月明かりにそれは姿も見せないが
あなたは一体どなたですか―
蒼く静まる木々や梢に隠れて
たしかになにかの気配がするのです

もしや愛しい人が月明かりに誘われ
たしかに たしかに そっと訪れ 
優しい瞳で見つめているような
いのちの饗宴の青葉茂る季節の前触れ
または過ぎてきた歳月の
ほんの一幕の物語

春のおぼろの夜の空に
幕を密かに開けるのは
ただ独りの客のためにだけ ですか
いえきっと月を観る人みんなの月明かりの窓辺では
同じ気配同じ吐息がするのでしょう

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