母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

蒟蒻の葉雨に打たれ

2017年07月22日 | 花(夏)
命拾いした蒟蒻は
夏になると大きな葉を茂らせた
売られていたちいさな蒟蒻玉
あまりにも幼くひ弱なので
食べるには躊躇いあった蒟蒻玉

すり下ろして水に入れて
アルカリ混ぜられ煮詰められ
かき回されて冷やされて
薄切りされて皿に乗り山葵醤油などで刺身にされ
消えてゆく
短い命 の筈だった

ところが風そよぐ縁側の笊の中で
ちび蒟蒻玉はいきなりピンクの芽を出した
円錐形の赤い芽が
おもちゃ遊びで興奮した
オスの仔猫のおしりのようで
土に入れて春になると
青い葉っぱを伸ばし出した

夏の夕立嵐に雨に耐え
蒟蒻玉は大きな葉を
誇らしげに広げ威張るようになった
嵐や雨に打たれてもゆらりゆらり何処吹く風

明日のことは知れぬがこの世
むざむざ消えて去る者ばかりでないと
語っているしぶとい蒟蒻玉
命とどめた蒟蒻玉
その大きな葉っぱは遠い昔の
広い夏の畑を想い出させる
不思議な運と縁を思い出させる






コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 時間 | トップ | 花の夏 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

花(夏)」カテゴリの最新記事