母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

時間

2017年07月11日 | Weblog
砂の中の旅の街
さらさらさらと頭上から
足下に砂が落ち続け

窟は初夏のオアシスの
緑の木立に囲まれ埋もれて
壊れやすい宝の小箱のように
忍び寄る砂漠の中に潜んでいた

壁画の線色は蒼く
時はしずかに澱み
訪れる人間の数を数えながら
仏陀は途方もない長い時を過ごされていた


緑したたる島で
紫陽花は青く揺れ
梅素麺を食せば
天山の山脈は南アルプスの褶曲と重なり
銀色の翼の下
乾大陸の夥しい先人の足跡の
故城の土塁も壁も伝説の
燃える赤い山も
止まらず積もる時間の中
しずかにアルバムの中に眠ってゆくだけだった

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