誤訳のおわび
さすらいの青春(519)に誤訳(というより部分未訳)がありました.
未訳部分は赤色部分です.すみませんでした.4904番の訳文はすで
に加筆修正済みです.
.————————(訳)—————————————
まだ夜は明けていなかったが、そのとき馬車
が街道上で止まって、モーヌは窓ガラスをたた
く誰かに起こされた.御者がつらい思いでドア
を開けて叫んだが、そのとき同時に夜の冷たい
風がモーヌを骨の髄まで凍らせた.
「ここで降りてもらうことになるよ.我々は
ここから近道をするのでね.サント=アガット
はもう目の前だ.」
追記
それから翻訳書では péniblement には「やっとのことで」と
いう訳がつけられていましたが、そんなドアなら修理してい
たはずだと思ったので、「悲しい思いで」「すんませんなあ」
という気持ちで開けたのだと解釈しておきました.
◉ 御者が苦労しいしいとびらを開けて(旺文社)
◉ 御者がやっとのことで戸をあけた(角川)
◉ 馬を操っていた男が苦労してやっと扉を開けて
(岩波)
◉ 御者が、苦心して戸を開いて(みすず書房)
◉ 御者がやっとの思いで戸を開けて(パロル舎)
◉ 御者が、やっとのことで扉を開け(講談社)
もしかしたら、この御者には「気の毒な悲しい思い」
なんて全然なかったのかも!
———————【519】———————————
Ce n'était pas encore le petit jour
lorsque, la voiture s'étant arrêtée sur la
route, Meaulnes fut réveillé par quelqu'un
qui cognait à la vitre. Le conducteur
ouvrit péniblement la portière et cria,
tandis que le vent froid de la nuit
glaçait l'écolier jusqu'aux os:
« Il va falloir descendre ici. Le jour
se lève. Nous allons prendre la traverse.
Vous êtes tout près de Sainte-Agathe. »
.——————— ⦅語句⦆ ————————————
petit jour:(ほのかな)曙光
au petit jour / 夜明けに
cognait:(直半過/3単) < cogner (自) 強く打つ
たたく、
conducteur, trice:(n) 運転手、御者
ouvrit:(直単過/3単) < ouvrir (他) 開ける
péniblement:(副) ❶骨を折って、やっとの事で、
❷つらい思いで、悲しく
portière:(f) (乗物の)ドア
cria:(直単過/3単) < crier (自) 叫ぶ、大声を出す.
tandis que:❶~する間に;❷~であるのに
glaçait:(直半過/3単) < glacer (他) 凍らせる、
こごえさせる、
os:(単複同形)【単数の発音=オ】【複数の発音=オス】
(人、動物の)骨、(魚の骨は arête)
Il va falloir descendre ici:ここで降りることになるよ.
il faut descendre ici. / ここで降りなければならない
il va falloir descendre ici. / ここで降りることになる
Le jour se lève:夜が明ける
prendre une traverse:近道を行く
Nous allons prendre la traverse:我々は近道をする
Vous êtes tout près de Sainte-Agathe:
もうサント=アガットはすぐのところだ.
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