さすらいの青春(553)
𝓛𝓮 𝓖𝓻𝓪𝓷𝓭 𝓜𝓮𝓪𝓾𝓵𝓷𝓮𝓼
———————【553】———————————
Ils étaient vers la croix. Je m'avance:
je fais deux pas——Hip ! les voilà partis
au grand galop du côté de chez vous.
Ah ! je n'ai pas hésité, j'ai pris mon fa-
lot et j'ai dit: je vas aller raconter ça
à M. Seurel... »
Et le voilà qui recommence son his-
toire:
—————————(訳)—————————————
ふたりの若者は街道のロータリーのあたりに
いました.私は2歩ほど踏み出しました.何と
参ったことか! 彼らはお宅のほうを目指して
猛ダッシュで駆け出しました.あれまあ! 私
は迷うことなく、角灯を携え言いました:
「このことをスーレル先生のお宅へ報告してく
るからね.」
肉屋はこうして話を繰り返すばかりであった.
———————— ⦅語句⦆————————————
croix:(f) 十字架、ただしここでは❶教会の墓地、
❷四辻街道、のどちらかを象徴的に描いて
いる.おそらく❷の意味.定冠詞があるの
で既出語であることが暗示されている.des
Quatre-Routes. のことであろう.これはただ
の四辻ではなく、4つの街道が4方向に延び
るロータリーであろう.その付近に立ってい
たということ.
histoire:(f) 出来事、事のいきさつ、問題
Hip ! :ばんざーい!、この万歳は勝利の万歳では
なく、降参、お手上げの万歳.「何と参った
ことには」と訳しておきます.
hésité:(p.passé) < hésiter (自) ためらう、迷う
躊躇する
falot:(m) (大型の手提げの)角灯
je vas aller raconter ça a M. Seurel...:文法では
vais と言うべきところ.訛りを描いて
いるか単に入力ミスか、他のLe grand
Meaulnes を開けてみたがvas だった.
肉屋のおやじの訛りということでしょう.
「おらスーレル先生のとこさ行ぐべす」
recommence:(直現/3単)
< recommencer (他) 繰り返す
肉屋はこうして話を繰り返すのである.
le voilà qui:le は肉屋、qui 以下は現在形ですが、
過去形で訳しました.
le voilà. / ほらあそこに彼がいる.
くり返して話す彼がそこにいた.
voici はこれから話すこと、「つまりこう
いうことだ」と」話を切り出す.
voilà は、「以上が…のあらましだ」と話を
終える.(原則はそうだが例外もある)
——————— ≪ひとこと≫ —————————————
「このことをスーレル先生のお宅へ報告してく
るからね.」
この肉屋のセリフが誰に言っているのかが不明
になっています.❶家内に言った、❷ひとりごと、
❸駆け出した2人の青年、❹わざとぼかして読者
に委ねた.
読者に4つの選択を委ねた作者は、十字路とい
う街道を描いて、登場人物にも選択をさせている
のが面白い.「岩波文庫」の『グランモーヌ』の
解説によると、選択には意外な結果があるようで
す.それが「グランモーヌ」の魔術的要素になっ
ているのだとか.
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