はちみつブンブンのブログ(伝統・東洋医学の部屋・鍼灸・漢方・養生・江戸時代の医学・貝原益軒・本居宣長・徒然草・兼好法師)

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貝原益軒の養生訓―総論下―解説 035 (修正版)

2015-08-13 12:23:45 | 貝原益軒の養生訓 (修正版)
(原文)

貧賎なる人も、道を楽しんで日をわたらば、大なる幸なり。しからば一日を過す間も、その時刻永くして楽多かるべし。いはんや一とせをすぐる間、四の時、おりおりの楽、日々にきはまりなきをや。此如にして年を多くかさねば、其楽長久にして、其しるしは寿かるべし。知者の楽み、仁者の寿は、わが輩及がたしといへども、楽より寿にいたれる次序は相似たるなるべし。

心を平らかにし、気を和かにし、言をすくなくし、しづかにす。是徳を養ひ身をやしなふ。其道一なり。多言なると、心さはがしく気あらきとは、徳をそこなひ、身をそこなふ。其害一なり。

山中の人は多くはいのちながし。古書にも山気は寿多しと云、又寒気は寿ともいへり。山中はさむくして、人身の元気をとぢかためて、内にたもちてもらさず。故に命ながし。暖なる地は元気もれて、内にたもつ事すくなくして、命みじかし。又、山中の人は人のまじはりすくなく、しづかにして元気をへらさず、万ともしく不自由なる故、おのづから欲すくなし。殊に魚類まれにして肉にあかず。是山中の人、命ながき故なり。市中にありて人に多くまじはり、事しげければ気へる。海辺の人、魚肉をつねに多くくらふゆえ、病おほくして命みじかし。市中にをり海辺に居ても、慾をすくなくし、肉食をすくなくせば害なかるべし。

(解説)

 前回、鬼神についてふれましたが、今回はそれの続きです。とは言っても、それは『論語』を読んだことがある人にとっての続きであり、そしてこの三つの短文も繋がっているのです。

 『論語』雍也篇において樊遅は孔子に「知と仁」とは何かと尋ねると、孔子は以下のように述べました。

民の義を務め、鬼神を敬して之を遠ざく、知と謂うべし。

仁者は難きを先にして獲るを後にす、仁と謂うべし。

 孔子は続けて言いました。

知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ。知者は動き、仁者は静かなリ。知者は楽しみ、仁者は寿し。

 益軒は、「山中の人は多くはいのちながし」と山のメリットを説きながらその理由を述べました。その目的は、人々に「仁者」になって欲しいと願っていたからでしょう。「仁者は山を楽し」み、「静か」に生活し、「寿」であり、たとえ人々の初めの目的が単なる長寿であっても、最終的に「仁者」になれば、天下を平和な人間性あふれる世界に近づけていくという儒者の目的を達成できるのです。

 ちなみに「寒気は寿」は『淮南子』墜形訓から来ています。

(ムガク)

(これは2011.3.16から2013.5.18までのブログの修正版です。文字化けなどまだおかしな箇所がありましたらお教えください)


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