昨日、思い切って一人で出かけた1年振りの上野。 お目当ては東京国立博物館と国立西洋美術館。 博物館では特別企画の「奈良大和四寺のみほとけ」展、西洋美術館では開館60周年記念の「松方コレクション展」が開催中。
東京国立博物館のみほとけは奈良の岡寺、室生寺、長谷寺、安部文珠院から国宝4件、重要文化財9件が展示されていました。 室生寺の国宝「十一面観音菩薩像」のふっくらとした優しい丸顔に魅せられ、同じく室生寺の国宝「釈迦如来坐像」のどっしりとして見る者に安心感を与える包容力のある姿に惹かれました。
しかし、この日一番の出合いは何といっても、2階に展示されていた伊藤若冲の「玄圃瑤華」のモノクロームの「拓版画」の世界でした。 「拓版画」とは正面彫りした版木の上に塗らした紙を貼り、表から墨を塗ると凹部が白く残るという特殊な技法なのだそうです。 この技法を使って若冲自身が版木を彫った可能性があり、現存例が少ない貴重な28枚の作品ということです。 技法はともかく、個性的な着色花鳥画で知られている若冲としての認識しかなかったのですが、モチーフの草花や虫たちが漆黒の背景にして生き生きと白く浮き上がっている画面に釘付けになりました。
多分作品は図録かポストカードになってショップに置いてあるだろう、とショップに行って聞いてみると、どちらもないとのことで、ガッカリ・・・ 写真に撮るわけにいかず、撮れてもガラスケースの中の展示物なので、うまく撮れないし・・・ ショップの中でしばらく呆然としていると、奥に下がったスタッフの方が、なんと『この絵の事でしょうか』と手に若冲の拓版画のカレンダーをもって声をかけてくれたのです!! まさに探していた若冲! 「そうです、それです!」と言うと、『これは博物館で印刷した今年のカレンダーですが、もう半年も過ぎてしまったので店頭から下げて置いたものです。 差し上げますよ。』と!! ポストカードより、また図版より12枚のカレンダーの方がずっと良く作品を見ることが出来るのです
8月
セミの羽化を見た後のプレゼントかしらん!? まさか・・・ しかし ここ数年こんなに嬉しく感激したことはありませんでした カレンダーを抱え、心ウキウキ、次なる西洋美術館へ。
朝、博物館へ行く途中に見た時には長蛇の列が伸びていて、今日は無理かと半ば諦めていたのに、昼近くの時間になったその時は、入場券売り場の前に10人ほど。 そのまま入場して、大正時代の実業家、松方幸次郎が「日本人に本物の芸術をみせたい!」との一心で収集した、3,000点にも及ぶ西洋の名画の西洋の数々を見て回りました。 睡蓮のモネをはじめ、ゴッホ、ルノワールなどお馴染みの名画に出合えて気分はハイ。 ゴッホの「アルルの寝室」が57.5x74cmと意外に小サイズなんだ~~と思ったり、ゴーガンの初期の作品の「籠の中の花」や「扇のある静物」に浮世絵の影響を見たり、これまで目にしていなかった数々の作品群に引かれて足が棒・・・ 庭にはロダンの「地獄の門」や「弓を引くヘラクレス」「カレーの市民」「考える人」などの彫像が待っていてくれましたが・・・
時計を見ると午後1時半、お腹は空いていましたが、夫のディの日に、掛けをするような気分で出てきたので、先ずは家に直行することに・・・ なんとか今日もご機嫌で過ごしてくれることを祈りながら、家には3時ちょっと過ぎに到着。 感激を噛みしめながらゆっくりお昼を食べ、コーヒーを飲んでいるうちに、ご機嫌で帰ってきました~~ 送ってくれたスタッフさんに、『今日お陰さまで上野の美術館へ行ってきた」と言うと、『久しぶりにゆっくり自由な時間をとれて、良かったですね。』と一緒に喜んでくれました。 よい施設とスタッフさんに恵まれた幸せをしみじみ味わっています。 感謝です。