マグソクワガタの秘密
GW最後の日、今日はマグソクワタについて
野外と飼育を通して私がこれまでに知り得たことを掻い摘んでみます。
尚、詳細な地名や場所を特定できそうな画像はありません。
*追記:2016年3月21日「メスの行方」
*追記:2017年6月10日「飼育下」
マグソクワガタ Nicagus japonicus Nagel,1928
分布:北海道・本州
発生:おおよそ4月下~6月
観察期間:2005年5月4日~
場所:分布最西方面及び自宅
野外観察
野外での発生時期は、その年の天候によって若干のズレが生じますが
最も多く観察できるのは5月中頃でした。
観察は、天気がよく、風の少ない日のお昼前~16:00くらいまでがベストでした。
交尾
オスは、小石や草本、砂地などで触覚を広げてメスの飛来を待ちます。
待機するオスはある程度間隔をあけて止まっており
観察では、オス同士が戦うような場面は見ませんでした。
メスは、1~1.5m位の高さを直線的に飛翔してきます。
メスは、着地の瞬間に転倒する個体が複数観察できました。
↓ メスは、オスの二回りほどあり、まるで別物です
メスが着地すると付近にいたオスが歩行や飛翔して集まり
メスの激しい奪い合いが始ります。
その様子は、”おしくらまんじゅう”みたいな感じです。
↓ 発生木の一つと思われる埋木、増水時には水の中!
1頭のオスがメスと交尾を成立させると他のオスは申し合わせたように散らばります。
また、オスは交尾を済ませたメスには興味を示しませんでした。
マグソクワガタの交尾はどうやら早い者勝ちのようです。
飼育観察(管理温度18~24度)生育ステージ(n43)
産卵場所は、朽ち木です(マットでも産卵するらしい)
卵の大きさは、直径約0.5mm程度です。
画像に写る卵(3個)には糸のようなものが付着していた記憶があります↓
孵化した幼虫はその年の秋には終齢となり、翌年の6月下旬に羽化しました(卵から13ヶ月)
これでは当年の活動には間に合いません。
↓ 初齢~終齢幼虫
↓ 幼虫頭部
幼虫期での雌雄判別は私にはできませんでした。
幼虫は、触ると死んだふり(?)をします。
蛹の期間はほぼ16日です。
↓ 前蛹
オスが先に羽化をはじめ、5日ほど遅れてメスが羽化を始めます。
最初の羽化から最後の羽化が終わるまでに要した日数は13日で
2週間くらいの間に集中して羽化することが判りました。
羽化にかかる時間は約1時間。
↓ 1メモリ1mm
昼夜問わず羽化します。ラッシュ!ラッシュ!
↓ 蛹時に後翅にマダラ模様が付きます
↓ 横向きのまま羽化してしまいました
後翅は暫くはたたんだままで横向きから体制を整えたら後翅を伸ばし乾かします↓
横向きのまま羽化(脱皮)した個体でも、羽が変形したり、はみ出したりする
所謂羽化不全のようなことにはなりませんでした。
雌雄の比率はオス47%・メス53%の五分五分
↓ オス
↓ 羽化翌日の2オス
その他
飼育下ではオスは交尾後1週間程度生存していました。
交尾の時間は10分~
交尾を済ませたメスは地中に潜り、画像のメスは20日間潜りっぱなしでした。
2頭のメスから採れた卵の数は、68個
メスと同居させずに飼育したオス5頭(未交尾)の中には
翌年の5月まで生存した個体がいました(殆ど潜りっぱなし)
つまり、一度外界に出てきたオスが次の春まで生存したということです。
また、雌雄ともに摂食(ゼリー)する姿を見ることはありませんでした。
考察
中期に渡り観察をしてきたマグソクワフガタですが中でも興味深かったのは
①交尾直後のメスにはオスが振り向かないこと(野外観察)
これは、メス或いはオスによる何らかの信号があるものと想像します。
②未交尾のオスが飼育下ではその次の春まで生存したこと。
飼育という特殊な環境下での出来事とはいえ、思いのほか長生きすることを知りました。
↓ オス野外個体
この時の観察では7月・8月に地表に現れた個体も確認したので
もしかして・・・という思いが今でもあります。
③卵には糸のようなものが付着していたこと。
この時の記録メモをしていませんが卵と糸が繋がっていたと記憶します。
追記:メスの行方(ゆくえ)
マグソクワガタは、メスを発見できるチャンスが非常に少なく
その行動はまだよくわかっていません。
飼育では雌雄の比率は五分五分ということが検証できました。
観察場所では、交尾を済ませたメスはしばらくすると川上に飛んでいきます。
このメスの行方を幾度か追ってみたのですが
途中の水流と石のぬめりに足をとられ、見失うばかりでした。
恐らく産卵場所へ移動しているものと推察しますが
まだ確認するには至っておりません(2016.3.21)
追記:飼育下(2017年6月10日)
今年は久しぶりに飼育をしました。
過去も含め、野外から持ち帰ったマグソクワガタの交尾成立を見たことがありません。
それは今年も同じでした。
↓ メスに乗るオスを乗り越え、後ずさりしてそのオスを排除する
↓ 排除されないよう前方に移動してメイドガードするオス
↓ メスは、どのオスも受け入れない
↓ メスはオスを受け入れない
↓ いくら試みても交尾は成立しない
マグソクワガタの産卵セットはマットでもよいみたいですが
観察するには現地に近い条件でセットする必要がありました。
↓ 川砂
↓ 産卵セット 朽ち木を砂で埋める
↓ セット完了
セットから20日ほど経過したころオスは砂の上で死亡しており
その後メスも砂の中で死亡しているのを確認しました。
そこで産卵の有無を確認してみたところ幾つかの卵を見つけることが出来ました。
↓ 画像中央と中央左側
↓ 画像中央、卵の大きさは1㎜あるかないか
マグソクワガタは、他のクワガタとは異なり朽ち木を齧って産卵はしません。
朽ち木の表面に産み着けられた卵はやがて孵化し、幼虫は朽ち木の中に入って行きます。
また、先の飼育観察の項でも書いてますが、卵は糸のようなものと繋がっている場合があり
それが朽ち木に起因する菌系等によるものかどうかは残念ながら今回もわかりませんでした。
また、卵は割り箸などで触れるとくっつきます。
↓ 卵は何かとつながっているため、宙に浮いたようになる
↓ ぶら下がった卵(中央の白ぼけ)
*画像はすべて2017年撮影
余談~出会い
過去にマグソクワガタの野外観察をしていた時
2人の男性がカメラを持って河原に降りてきました。
「?」漁業組合の入場券確認かと思いながら観察を続けていると
「マグソクワガタですか?」と声をかけられました。
「はいそうです。」
その方は、ここでマグソクワガタを最初に発見された方でした。
なにを隠そう 私はその方の撮られた写真(図鑑)を頼りに
高山性のクワガタをそれまで探してきたのです。
そして、もうお一方も聞き覚えのあるお名前・・・
「え~っ!!」とても衝撃的な出会いでした。
今でも昨日のことのように思い出します。
その節は、いろいろな知見と情報を頂きありがとうございました。
最後に
今日は、私がこれまでにしたためてきたマグソクワダタのことを
私なりに簡潔した形で書いたので説明不足も多々あると思いますが
過去の文献や他者URL等で記述されていないような事柄を出来るだけ選びました。
また、限られた範囲での観察のため特殊な例を見た可能性もありますので
これ以上踏み込んだ推測は控えます。
↓ 三段目右2頭がメス(全て野外個体)
以上、私の見た「マグソクワガタ」でした。
*追記:2016年3月21日「メスの行方」
*追記:2017年6月10日「飼育下」
*追記以外の画像はすべてアナログ写真
参考文献:
田花雅一・奥田雅雄,1992.マグソクワガタについて.月間むし(256).
高橋寿郎,2000.きべりはむし(28-1).
高橋寿郎,2000.きべりはむし(28-2).
藤田宏,2000.新潟県小千谷市のマグソクワガタ.月刊むし(356).
藤井弘,2005.春のもう一つのクワガタムシ.KUWAGATA MAGAZINE(24).
また、累代もされていると・・・
また、勉強させて頂くため、訪問させて頂きます m(_ _)m
はじめまして
乱暴に書き綴ったので判りにくい部分も多くあったかと思いますが、読んで下さいまして
ありがとうございました。
また、地味な内容にも関わらず、目を向けて頂き誠に恐縮です。
これからも宜しくお願いいたします。