今日は孫の修学旅行で、娘は朝6時に孫を中学校に送って行った。
「出発を見送りたかったけど、『恥ずかしいから止めて』と追い返された。」と笑う。
そんなお年頃なのだ。
「二晩もA子が居ないなんて寂しいよー、寝れないよー!」と大げさに嘆いて見せるので、
「A子の枕抱いて寝りぃ!あんたが入院してた時はねぇ、A子はあんたの枕抱いて寝てたんよ。」
と、茶化していたら、ジワッと当時のことが蘇ってきた。
孫が小3年の5月に娘は入院した。
直ぐに退院できるものと安易に考えていたが、許可が出たのは秋風の吹き始める9月の末だった。
その間に私の夫も持病で倒れて入院し、しばらくは私と孫の二人暮らしだった。
私自身も3月に母親を亡くしたばかりで、次から次の不幸に泥沼に引き込まれる思いだった。
そんな時知人から『ブッダ』の絵本が送られてきた。
知人は『マンガ世界の偉人』の新刊が出る度に送ってくれていたので、特別な意味はなかったと思うが、
これは私にも孫にもある種の教えを示してくれるものだった。
孫は時折堰を切ったように泣いた。無理もない、まだ9歳なのだ。
「Aちゃん、お釈迦様はなんて言ってるの?」私は問う。
孫は、しゃくりあげながらも絵本の1ページをそらんじる。
「生きることは苦しいことであり、苦しみは執着(しゅうじゃく)から生まれる。
その執着を消せば、人は苦しみから逃れられるのだ。」
9歳の子供に『執着』などと解るはずがない。
私にもよくは解らなかった。
けれども、生きること自体が苦しみなのだ。と、観念することで泥沼から這い上がれたように思う。
恐らく今夜、娘はA子の枕を抱いて寝るだろう。
そしたら私はからかってやる。(笑)
こんな他愛もないことが、きっと今の幸せなんだと思うから。