自然のアルバム
僕は田舎育ちだったし、育った時代もまだ身近に自然が残っていたこともあり、いつも多様な生き物に囲まれていたような気がする。
フナやメダカやドジョウなどの魚採り、蝶、トンボ、セミなどの虫獲りは、僕の大切な日課だった。ペットとして夏の金魚から始まり、せがんで池を作ってもらい鯉も飼った。小学校に上がってからは、鳩やジュウシマツも自分一人で世話をした。また家にはネコがいた。
魚採り、虫獲りといっても、わざわざ遠くに出かけることではなく、家の庭に蝶やセミは飛んで来たし、家の回りの土を掘っただけの小さな流れには、ドジョウやメダカがたくさんいた。家から出ると、裏山の段々畑や田んぼがあり、たくさんの命があふれていた。それらの生き物が僕の毎日の遊び相手だった。
そんな環境のせいか、元来の性格か、僕は小さい頃から生き物に触れることが大好きだった。フィールドワークも好きだったが、生き物の図鑑や生態を現した本もドキドキしながら見たものだ。
まだ白黒放送だったテレビでも、ディズニーの動物ものや、「名犬ラッシー」「わんぱくフリッパー」などの動物が主人公のテレビドラマも大好きだった。テレビでは、NHKの「自然のアルバム」という番組が大好きで、小学校の4、5年生の頃には、親や兄弟がまだ寝ている日曜の午前6時15分に(そう記憶している)一人テレビをつけて見ていたことを思い出す。どうやって目を覚ましていたのか、眠い目をこすりながら寒い冬の日曜日に、毛布にくるまってテレビを見ていた自分を思い起こすことが出来る。
「自然のアルバム」は、昆虫や動物、魚類から植物まで、日本のあらゆる生き物の中から1話1種を選び、生まれて死ぬるまで、生態や環境を春夏秋冬1年から数年で描いたものが多かった。その15分間の映像そのものが、子供心に美しかったし、今考えると、BGMなども含めて、毎回毎回が芸術作品そのものだったような気がする。僕は「自然のアルバム」でよく使われたバッハ(伝)のシチリアーノという曲が好きになり、今でもバロック音楽が大好きだ。今も自然や生き物を扱った番組がたくさんあるが、最近の視聴者に媚びているような番組作りが好きになれない。
「自然のアルバム」を見ることにより、知らぬ間に、多くの生き物の名前や生態を知ったが、きびしい自然環境の中の野生の生き物達の生き様は、それ以上のものを僕に教えてくれたように思う。
(2011.11.1)