雲のたまてばこ~ゆうすげびとに捧げる詩とひとりごと

窓の雨つぶのような、高原のヒグラシの声のような、青春の日々の大切な箱の中の詩を、ゆうすげびとに捧げます

火遊び

2015年01月14日 | エッセイ
 火遊び

 火遊びというタイトルですが、単純に火を炊いて遊ぶお話なので、危険な期待をした方は、今すぐ退場するように。
 先日の日曜日に朝から近所の公園の清掃奉仕に参加したら町内会の役員の方が長男と長女が通った小学校の校庭で10時からどんどやがあるので、しめ飾りと餅を持って参加してください、と案内があった。
 最近心がけているウォーキングの途中で寄ることにした。
 開始時刻の10時少し前に到着。久しぶりに出水南小学校に足を踏み入れた。子どもが在校中とほとんど変わっていなかった。
 軽く百人を越す地元の人が運動場の真ん中に作られた10メートルはあるだろう高いやぐらを中心に集まっている。
 消防車も待機していて、時間になると消防団の方が松明でやぐらに組まれた藁に火をつけた。
 するとどうだろう。火は思っていた以上の速さでやぐらを駆け上り、あっという間にやぐら全体が大きな火の柱となった。
 私はリュックからカメラを取り出し、火を着ける瞬間を写真に撮ろうとやぐらのそばにいたのだが、あまりの熱さに思わず後退りをした。
 竹と藁で組まれた大きなやぐらは燃え尽きるのにそれなりの時間がかかるだろうと思われたが、時折青竹の爆ぜる大きな音を出しながら、やぐらはあっけない位の短い時間でぐずれ落ちてしまった。
 火力の強さを改めて感じた。火事の現場の火力や熱さはこんなものではないだろう。消防隊員や消防団の皆さんに敬意を表したい。
 私の南阿蘇村にある山小屋には、シンプルでモダンなデンマーク製の薪ストーブがある。
 暖炉ではなくストーブなので、基本的には扉を閉めて使用する。
中には扉が耐火ガラスになったストーブもあるようだが、私のストーブは薪が燃える様子が見えない。
 一番下に新聞紙、次に小枝。そして指の大きさほどの枝を積み上げ、マッチで火をつける。
 煙突とストーブの構造のせいか、火はすぐに勢いよく燃え出す。そして少しずつ大きな薪をくべていく。
 大きめの薪に火がついたら、ストーブの扉を閉じて、火力を調整する。
 でも私も、また山小屋を訪ねてきた友人も扉を開けて炎を見たがる。
 そこで、小枝や細い薪を多く準備していて、火を燃やすことを楽しむ。
 原始の記憶があるせいか、ストーブの中で燃える薪の炎を見ているのはあきないし、心が穏やかになる。
 もし別れる別れないの相談をする夫婦や恋人がいたら火を見ながら話をしてみると別れない結論になる傾向が出るように聞いたことがある。
 確かに効果がありそうな気がする。
 私と家人も離婚の危機は何度もあったが、この山小屋のストーブを使ってこの説を証明したことはまだ一度もない。
(2015.1.29)


 
 

 


 

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暖房と室温

2015年01月03日 | エッセイ
 暖房と室温


 小さい頃の真冬の家の中は寒かった。
 ちゃんとした暖房の設備は無く、炬燵と火鉢の炭以外に熱源が無かった。狭い茶の間に祖母と両親と兄弟5人が寄り添い、子どもだった私も炬燵布団に首までくるまってテレビを見ていた。尿意をもよおしても炬燵から出る勇気が無く限界まで我慢した。2卓の炬燵が並んでいたように思うが、今考えると祖母や母は炬燵の輪からはみ出していて、寒い思いをしていたのかもしれない。寝る時には布団に湯たんぽを使用したが、暖かいのは湯たんぽの周囲だけで、全体が温もるまでは敷布団も掛け布団も氷のように冷たかった。小さい頃は祖母と同じ布団に寝ていたが、祖母が後から布団に入った際に「人間アンカは良いアンカ~」と歌うように節をつけて言っていたのを思い出す。
 さすがにしばらくすると、我が家でも電気ストーブや石油ストーブ、ガスストーブなどを使うようになった。それでも家中の部屋を暖房するわけではないので自分の部屋で勉強するときは「丹前」と言って分厚く重たい袖のついた布団のようなものを着て、腰から下には毛布を巻いて寒さを防いだ。
 高校を卒業して6畳ひと間のアパートに住んでいた時は、石油ストーブが使用禁止で小さな電気ストーブと炬燵で寒さを凌いだ。
 木造のすきまだらけの古いアパートで、ある朝起きてみたら小さなキッチンの床にあったキャベツが凍っていたので凍らないように冷蔵庫に入れたことがあったのを思い出す。 
 父の代で建てた自宅を私が立て替えてやがて20年近く経つ。
 木造の在来工法で建てたローコストの小さな2階建てだが、断熱材だけは地域の規定料の2倍使用してもらったことと、1階の床がコンクリート仕上げで地面と直結していること、家の中央に螺旋階段がありその階段の周りに珪藻土という土壁を使用していることで、家全体が夏は涼しく、冬も暖かい。
 しかし20年近く経つと当然、あちらこちらに不都合が出てきて修理をしたり、取り替えたりしなくてはならない。
 夏前位からお風呂や洗面所、台所で使うガスの給湯器がおかしくなった。お風呂の温度設定が不安定で、入浴可能な温度で湯はりや温めなおしができなくなった。
 熱い湯を足せば良いのだが、3人の家族で入浴時間が違うので、お湯の量ばかり増えてしまう。
 本格的に寒くなる前に修理しようという話になったが、数万円で済む話でないことはわかっていたので二の足を踏んでいた。
 そんな時、ちょうど出入りのガス業者からガス関連企業が合同で開催する展示会の案内があったので、家人と二人出かけた。
 会場に着くと我が家の出入り業者のブースがあり担当者も会場にいて、事情を話すとやはり給湯器を新品に取り替えることとなった。
自宅の建築とともに設置した給湯器はすでに20年近く経っているわけで、故障した部品の生産がすでに中止されているし、もし運良く部品が見つかったとしてもすぐに他の部分の故障が発生しない保証はないからという話だった。それから最新の給湯器は省エネの技術が進んでいてガス代が随分安くなるということだった。さらに業者のオススメに従い、給湯器とセットになっている浴室暖房機まで買うこととなった。当日の特別値引きも大きかったが、これから高齢に差し掛かる私と家人のためにも、浴室や脱衣場を温める機能は必要かもしれないと思ったからだ。
 買う決断をするときは贅沢だなあと思わぬでもなかったが、今まで寒い思いをした脱衣場や浴室のあまりの快適さに、もう2日目にはなくてはならぬように感じてしまった。
 人間、快適さや贅沢にはすぐに慣れてしまうものだなあ。
(2015.1.3)
 
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冬の日

2015年01月02日 | ポエム

  冬の日


わたしの顔さえ
わからぬ母が
黙って子の手を握り返す
痛い程に力強く
言葉のようにあたたかく…

(2015.1.2)
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