雲のたまてばこ~ゆうすげびとに捧げる詩とひとりごと

窓の雨つぶのような、高原のヒグラシの声のような、青春の日々の大切な箱の中の詩を、ゆうすげびとに捧げます

鉄人28号とさくらとみずほ

2011年08月30日 | ポエム


 鉄人28号とさくら、みずほ

 先週の金曜日の朝、鉄人28号に再会した。
 考えたら45年ぶりだった。
 もちろん45年前に、鉄人28号と知り合い、言葉を交わした訳でもない。実際に出会った訳でもない。でも金曜日の朝、神戸市の新長田駅の側にある若松公園に、心躍らせ、歩を早め乍ら45年ぶりの再会だと思った。
 10歳。小学校4年生の頃だったか、絵を描くことの好きだった私は、描くことが可能な紙という紙に、毎日のように鉄人28号を描いていたからだろう。
 金曜日の朝に再会した方の鉄人28号も動くことのない高さ18メートルの鉄鋼性のモニュメントである。でも実際の(?)鉄人28号も鉄鋼で出来ているはずだから、実物大(?)の大きさといい、質感といい、まるで本物なのだ。単純に感激した。ニホンに降り掛かる災いをエイと吹き飛ばしてくれそうな表情とポーズもいい。東日本に「ビューンと飛んでく」ところを想像した。
 ビューンと飛ぶ様なスピードなのは、その朝に全線開業後初めて乗車した九州新幹線だ。熊本駅始発の新大阪行きさくら544号。熊本平野を一望に、阿蘇から昇ったばかりの朝日が輝き、逆光の中に我が街の城、熊本城がそびえている。と、感激していたら20分でおとなりの福岡県に入ってしまった。カミサン、手作りの弁当を食べ終え、ウトウトしていたら本州に。ガラガラで、大丈夫かいなと心配になった普通車指定席の車内は、満席になってしまった。
 九州新幹線のN700系を使用した「さくら」「みずほ」の指定席は、山陽新幹線で、開業以来人気らしい。理由は、新しいという物珍しさもあるが、同じ普通車指定席料金なのに、みずほとさくらは、グリーン車と同じ4列シートでゆったりとしたより快適な点が評判になっているらしい。陶器をイメージしたという青みがかった外観の塗装も好きだ。ただ内装のデザインは、主に九州内の「つばめ」に使用している800系の方が個性的で好きだ。ぜひ九州に来て乗ってください。
 神戸からの帰りは、最速の「みずほ」だった。18時13分新神戸発。ビールを飲み乍ら神戸の牛飯を食べ、またウトウトしていると九州に。博多駅でしっかり目が覚めて車内販売のコーヒーでも飲みたくなったけど、博多を出た時点で、もうすぐにでも熊本駅に着きそうな雰囲気。実際車内販売が来たときは、あと20分も無かったから、慌ただしい気がして、コーヒーは我慢した。21時丁度の熊本着。2時間47分の早さだ。もう関西までなら飛行機より私は新幹線がいい。
 鉄人28号を描いていた小学4年生の頃。鉄人と同じ位、鉄道の絵も描いていた。「九州新幹線2000年開通」というその頃の絵が残っている。当時熊本から博多に行くと言ったら、急行列車でもちょっとした大旅行だった。旅にお菓子やサンドイッチや弁当は付き物だったし、国鉄の電車急行にはビュッフェが連結されていて、そこで食事する幸運な時もあった。ビューンと飛んでくように走る新幹線は、私の旅の感覚には少し早過ぎるかもしれない。
(2011.8.31)
 


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MYSELF 1

2011年08月24日 | ポエム
 MYSELF 1

ひとは ぼくをほがらかなひとだと言う
ひとは ぼくを見て明るくなると言う
ひとは ぼくと話をして楽しいと言う
だから『おひとよし』のぼくは
泣きたいのをこらえて
ひとの言うとおりにしている
(1972.5.22)


 ラジオ

 先の日曜日の朝を迎えた家には、テレビが無かった。
 正確に言うと、テレビはあるのだが、今年7月24日に死んでしまった。つまり地デジ化をしてなかったのだ。月に一度位しか利用しない家だから、地デジ対応のテレビを買うのは検討中で、以来ラジオを聞いている。もともとこの家にいる時は、テレビよりもお気に入りのCDの音楽を大音量で聞いて過ごすことが多い。しかし、ずっと以前の連休に、そうやってテレビを見ずに数日過ごしていて、猛スピードでやって来た台風を知らずに、近所の立寄温泉に入っていたことがある。さすがに人気のある混浴露天風呂も、木の葉の舞い飛ぶ暴風雨の中、入浴していたのは、我が家だけだった。台風を教えてくれない旅館の人も旅館の人だが。以来、我が家を守る危機管理のひとつとして、テレビをつけて1日1回はニュースをチェックしていた。
 日曜の朝、未明にヒグラシの澄んだ声の大合唱で一度幸せに目が覚め、明るくなってお湯を沸かし、コーヒーを入れて飲み、ニュースのチェックをするつもりでラジオのスイッチを入れた。
 雨は降っていないが、天気予報は大雨。番組を中断して、近い町に大雨洪水警報が、さらに県下に竜巻注意報が出たとの臨時ニュース。厚い雲に覆われた空は暗いままだ。
 顔を洗って、つけっぱなしのラジオを消そうと近づいたとき、聞き覚えのあるピアノ演奏が。
 ラジオ体操だった。
 で、ふと余興で、体操の振りを覚えているか、いないか音楽と指導の声に合わせて身体を動かしてみた。
 ラジオ体操、第一も第二も。いくつか心もとない動きがあったがほとんどは、頭で思い出す前に身体が覚えていて勝手に動いてしまう。
 「ハイ、手の先まで伸ばしてー」
 終わったときには、身体がポカポカしてきた。
 そうだよね。小学校入学以来、高校を卒業するまで、12年間。準備体操と言ったら、ラジオ体操だったし、夏休みは、普段より早起きさせられて、近所の広場でラジオ体操をした。
 でも嫌いじゃない。身体を動かして、気持ちがいい。
 「みんなSを見ろ。準備体操で汗をかいてる。Sを見習え」
 高校の体育の時間、怖い体育教師から唯一褒められたことを思い出した。
 ここ数日、節々が筋肉痛だ。
 「何をしたのよ」と家人が問う。
 「ラジオ体操第一第二」
 身体が覚えていたのはいいけど、身体はあれから37、8年経っていることを忘れていたらしい。
(2011.8.24)
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たびだち

2011年08月23日 | ポエム



 たびだち

遠い山の
灰色の空と
遠いまちの
灰色の空とに
大きな大きな
虹の橋ができた
そして
きょう
いま
あの橋をわたって
旅立ちをするのです
あの虹をみた
あの人が‥‥
あの虹をみた
ぼくも‥‥
(1972)

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感謝

2011年08月16日 | ポエム
 感謝

僕は 感謝しなければならない
ありがとう
ありがとう
僕をここへ導いてくれたすべてのものよ
ここには踊るような時がある
生命(いのち)にしみるような世界がある
ありがとう
ありがとう
僕の小さな心のなかは
幸せでいっぱいになり
目から涙になって あふれそうだ
(1978)


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誕生

2011年08月12日 | ポエム
 誕生

僕は 生まれた。
本当の僕は、つい
ひと月前に生まれたのかも知れない。

だから 今の僕は、
母の子宮から 脱出して
すっかり まる裸なのだ。

みな笑っている
みな あざけっている
裸の僕を見下した様に‥‥

僕は 唇を噛みしめ
じっと、くやしさをこらえるけれど
やはり僕は 裸なのだ。

( へその緒は いらない。
 もう乳首は いらない。)

僕は 生まれた。
本当の僕は、つい
ひと月前に生まれたのかも知れない。

僕という子宮の内(なか)から
故郷という胎動をとおって。
(1978)




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