▲美味しいミニトマトを植えた。いよいよ、もうすぐ収穫かな。
キウイとキュウリとズッキーニ
このブログも食べ物の話しが多いなあ。開設者が食いしん坊だから、仕方ありませんね。記憶にある最初の愛唱歌が「ふしぎなポケット」で、叩くたびにビスケットが増える不思議なポケットを真剣に欲しいと願っていたし、小さい頃好きだった絵本は「ちびくろさんぼ」で、虎が溶けたバターで作ったパンケーキは、どんな味なのか本気で食べてみたかった‥‥。
美大の受験のために、熊本の高校を卒業して、東京の美術研究所(美術大学受験のための予備校)に通った。
その予備校で、清掃や授業の準備を手伝うアルバイトをした。そしてバイトしたお金をため、神田の古本屋街に行って、欲しい画集を1冊ずつ買った。
ある日、そのバイトで、静物画のモチーフとなる野菜や果物を八百屋から買ってくるように、担当の講師から依頼された。その買い物リストのメモの中に問題の「キウイ」があった。キウイフルーツのことだが、当時の私は、見たことも聞いたことも、もちろん食べたことも無かった。そのために、講師が描いた静物画のイメージ図にある卵形に描かれたキウイを、乱暴に丸っこく描かれてしまった絵とメモの間違いだと思い、キュウリを購入してしまった。
研究所に戻り、講師に指摘され、もう一度八百屋に戻って、キウイに初対面した。30年後の今は、朝からキウイを普通に食べているから人生不思議。
それから4、5年後。単身パリに渡った私は、日本料理店に勤めていた。同じ職場の人と一つのアパルトマンを今風に言えばシェアして住んでいて、休みが重なった時は、小さなキッチンで料理を作って一緒に食べることもあった。
食事の材料を買いに、近くのオペラ通りにある「モノプリ」というスーパーマーケットに行った。フランス語がよく理解できなくても、カゴに入れてレジに行き、言われた金額を支払えばいいので、気安く買い物が出来た。売っているものは、当然フランス語で表示されているから、少しだけ注意が必要となる。日本から来たばかりの同僚が、大きな肉の固まりを安く買って、ニコニコしていたら、その肉のパックにペット用と表示されていたという笑い話があった。
私もパリに来て間もない頃、同じスーパーで似た失敗をしたことがある。それは、キュウリを買いに行き、ズッキーニを買ってきてしまったことだ。キウイと同じように、ズッキーニという野菜の姿形はもちろん、存在自体をしらなかった。その時は、パリ在住の長い同僚がいて、名前と食べ方を教えてくれた。形は大きめのキュウリにそっくりだけど、カボチャの仲間。サイコロ状に切って、ステーキを焼いた油で炒めて、付け合わせにした。
それから数年後、日本に帰ってから、種を求めてズッキーニを栽培した。日本名は「つるなしカボチャ」。大収穫だった。今でこそ、キウイのように市民権を得たズッキーニだが、当時はまだ熊本では出回っていなかった。数年後には、あちこちの物産館の店頭で見かけるようになったが、当初は1本が200円以上もする高級野菜だった。今では値段もぐっと手頃。私の家でも、よく食べる野菜の一つで、ラタトゥユという野菜の煮込み料理には欠かせない食材である。
ルッコラと呼ばれる香ばしい野菜も大好きだ。最初に食べたのはいつだろう。種物屋をしている唐津の妹夫婦あたりから種か苗をもらったのかもしれない。これも初めて栽培したのは、今から20年は前の話だ。ゴマに似た香りがして、サラダに混ぜると途端にグレードアップして、ワインにも合う一品になる。それから数年後に、ある物産館にルッコラが出ていて、農家のお兄さんが「これは何の香りがするでしょう?」と試食を勧めるので、食べる前に「ゴマ」と答えてがっかりさせたことがあった。
先日、NHKのプロプェッショナルという番組で、野菜農家の方が紹介されていた。日本では栽培されていない野菜を苦労して栽培されたとのことで、最初に利を生んだのは、ルッコラという話だった。私も初めて栽培した頃に、本格的に栽培していたら儲かったかもしれないが、当時の私はただ自分や家族が美味しく食べて喜んだだけだった。
(2013.7.27)