雲のたまてばこ~ゆうすげびとに捧げる詩とひとりごと

窓の雨つぶのような、高原のヒグラシの声のような、青春の日々の大切な箱の中の詩を、ゆうすげびとに捧げます

しらさぎのうた

2013年07月29日 | ポエム

 しらさぎのうた


夏の田の緑のじゅうたんの中から
しらさぎが二羽、飛び立った
白い姿は、
緑の中をしばらくさまようと
どこかへ飛んで行った
やさしいぼくらの足音におどろいて
ぼくらの心も知らずに
また
しらさぎは追われた
また
しらさぎは逃げた
(1972)

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キウイとキュウリとズッキーニ

2013年07月27日 | エッセイ

▲美味しいミニトマトを植えた。いよいよ、もうすぐ収穫かな。


 キウイとキュウリとズッキーニ

 このブログも食べ物の話しが多いなあ。開設者が食いしん坊だから、仕方ありませんね。記憶にある最初の愛唱歌が「ふしぎなポケット」で、叩くたびにビスケットが増える不思議なポケットを真剣に欲しいと願っていたし、小さい頃好きだった絵本は「ちびくろさんぼ」で、虎が溶けたバターで作ったパンケーキは、どんな味なのか本気で食べてみたかった‥‥。
 美大の受験のために、熊本の高校を卒業して、東京の美術研究所(美術大学受験のための予備校)に通った。
 その予備校で、清掃や授業の準備を手伝うアルバイトをした。そしてバイトしたお金をため、神田の古本屋街に行って、欲しい画集を1冊ずつ買った。
 ある日、そのバイトで、静物画のモチーフとなる野菜や果物を八百屋から買ってくるように、担当の講師から依頼された。その買い物リストのメモの中に問題の「キウイ」があった。キウイフルーツのことだが、当時の私は、見たことも聞いたことも、もちろん食べたことも無かった。そのために、講師が描いた静物画のイメージ図にある卵形に描かれたキウイを、乱暴に丸っこく描かれてしまった絵とメモの間違いだと思い、キュウリを購入してしまった。
 研究所に戻り、講師に指摘され、もう一度八百屋に戻って、キウイに初対面した。30年後の今は、朝からキウイを普通に食べているから人生不思議。
 それから4、5年後。単身パリに渡った私は、日本料理店に勤めていた。同じ職場の人と一つのアパルトマンを今風に言えばシェアして住んでいて、休みが重なった時は、小さなキッチンで料理を作って一緒に食べることもあった。
 食事の材料を買いに、近くのオペラ通りにある「モノプリ」というスーパーマーケットに行った。フランス語がよく理解できなくても、カゴに入れてレジに行き、言われた金額を支払えばいいので、気安く買い物が出来た。売っているものは、当然フランス語で表示されているから、少しだけ注意が必要となる。日本から来たばかりの同僚が、大きな肉の固まりを安く買って、ニコニコしていたら、その肉のパックにペット用と表示されていたという笑い話があった。
 私もパリに来て間もない頃、同じスーパーで似た失敗をしたことがある。それは、キュウリを買いに行き、ズッキーニを買ってきてしまったことだ。キウイと同じように、ズッキーニという野菜の姿形はもちろん、存在自体をしらなかった。その時は、パリ在住の長い同僚がいて、名前と食べ方を教えてくれた。形は大きめのキュウリにそっくりだけど、カボチャの仲間。サイコロ状に切って、ステーキを焼いた油で炒めて、付け合わせにした。
 それから数年後、日本に帰ってから、種を求めてズッキーニを栽培した。日本名は「つるなしカボチャ」。大収穫だった。今でこそ、キウイのように市民権を得たズッキーニだが、当時はまだ熊本では出回っていなかった。数年後には、あちこちの物産館の店頭で見かけるようになったが、当初は1本が200円以上もする高級野菜だった。今では値段もぐっと手頃。私の家でも、よく食べる野菜の一つで、ラタトゥユという野菜の煮込み料理には欠かせない食材である。
 ルッコラと呼ばれる香ばしい野菜も大好きだ。最初に食べたのはいつだろう。種物屋をしている唐津の妹夫婦あたりから種か苗をもらったのかもしれない。これも初めて栽培したのは、今から20年は前の話だ。ゴマに似た香りがして、サラダに混ぜると途端にグレードアップして、ワインにも合う一品になる。それから数年後に、ある物産館にルッコラが出ていて、農家のお兄さんが「これは何の香りがするでしょう?」と試食を勧めるので、食べる前に「ゴマ」と答えてがっかりさせたことがあった。
 先日、NHKのプロプェッショナルという番組で、野菜農家の方が紹介されていた。日本では栽培されていない野菜を苦労して栽培されたとのことで、最初に利を生んだのは、ルッコラという話だった。私も初めて栽培した頃に、本格的に栽培していたら儲かったかもしれないが、当時の私はただ自分や家族が美味しく食べて喜んだだけだった。
(2013.7.27)
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2013年07月24日 | ポエム


 道

田植えを終えた
田んぼと田んぼのあいだに
僕らがかつて走った道があった
唄うことをやめたひばりがいた
泥水を飲む蝶がいた

農家の人々が働いていた
遠くの山並が
青く光っていた

そして僕は
走ることを思い出した

(1976.7.2~2014.3.18)
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あめあがり

2013年07月22日 | ポエム

 あめあがり

雨は夕方にやみ
西の空から明るくなった
雨雲から出た太陽は
雨上がりのまちを照らす
まちは雨に濡れていて
水滴に太陽を写す
道路も
電話線も
木の葉も
みんな みんな水滴に太陽を写す
でも ぼくが外に出たときにゃ
もう太陽は山に沈んでいた
(1972.7.13)

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チーズのお話

2013年07月18日 | エッセイ
▲庭のブルーベリィが実りました。しっかり熟れたものから鳥が食べにきます。

 チーズのお話

 高校2年生から3年生になる間の春休みに、芸大の油画科の志望を決めていた私は、東京の美術研究所の春季講習会を受けるために、荻窪の伯父さんの家に滞在した。伯父の家には、私の5歳年上の兄と同級の従兄と、その2、3歳年上の従姉がいて、その従姉が滞在中は私の朝食と夕食を作ってくれた。
 その時の滞在での食事で強烈に覚えているのが、チーズトーストだった。
 一口食べて、あまりの美味しさにカルチャーショックを受けてしまった。見かけは、厚く切ったプロセスチーズを2枚、トーストの上に乗せてあるように見えたが、口にした途端、熱くてとろりと溶けてしまうチーズに驚いた。
 熊本に帰って、早速まねて作ってみた。オーブントースターが無いので、パンにチーズを乗せて、フタをしたフライパンで焼いてみたが、固いプロセスチーズは、少し柔らかくなっただけで、あの従姉が作ってくれたチーズトーストとはほど遠かった。まだ熊本の店頭には、所謂とけるチーズが無かったのだ。
 その1年後に上京して、千葉県市川市に住むこととなった私は、生まれて初めて銀座のピザ専門店に連れていってもらい、これまた溶けたチーズがたっぷり乗ったピザと言う食べ物を初めて食べた。初めて食べたチーズトーストの私の感激とショックにはかなわないが、溶けたチーズはやはり美味しかった。
 それから4年後、私は縁あって単身パリに住むことになった。
 食いしん坊の私のことだから、お金は無くとも、週に1回の休みの日には、同僚と安くて美味しいものを食べに行った。中華料理や韓国料理もよく食べたが、やはりフランス料理の店が一番多かった。ただフランス料理と言っても、通常は庶民が利用する大衆食堂か学食みたいなセルフの店を利用した。ときには、日本から知人がパリに観光に来て、私がちゃんとしたフランス料理店に同行することもあった。そんなちゃんとしたフランス料理店では、メイン料理の後でトレーに乗せられたたくさんの種類のチーズが供せられた。
 食べたいチーズを指差すと、ギャルソンが一切れその場で切り取ってお皿にとってくれる。尋ねてはいないが、希望すれば何切れでもOKだったようだ。でもパリに行って間がない頃は、はっきり言って、青カビ系どころか鼻が曲がりそうに臭い匂いに、1、2種類のクセの無いチーズ以外は手が出なかった。
 私がパリで最初に住んだアパルトマンのすぐ近所にチーズ専門店があった。今は、そんなことは改善されているかもしれないが、一歩店内に入ると、強烈な臭気が鼻を襲い、長居は出来なかったのを覚えている。そのとき、「ああ、この感じは日本の漬け物屋に似ている」と思った。考えたら日本の漬け物とフランスのチーズは他にもいろんな共通点がある。
 何もないとき、急いでちょっと何かおなかに入れたいとき、日本なら茶碗一杯のごはんかおにぎりと漬け物を食べるが、フランスではチーズとバケットとワインで済ませることが多いようだ。夜中に小腹がすいたときに、漬け物とお茶漬けを食べたりするが、フランスにはカチカチのバケットをオニオンスープに浸し、チーズをたっぷりかけたオニオングラタンがある。
 ちゃんとした夕食では、先程書いたように、メイン料理の後で、チーズが供されるが、日本でも宴会料理の最後に、漬け物とご飯が出て来る。
 日本各地に様々な漬け物があるが、チーズも同様にいろんな地方に、いろんな特徴のチーズがある。大小の工場で作られるが、未だに家庭で作る自家製がある点も漬け物とチーズは同じだ。
 またそのものをそのまま食するだけでなく、味付けにも利用した様々な料理があることも共通している。そして、もう一つ臭いと言えば臭い。
 しばらくパリに住んでいた私は、少しずつチーズに慣れて、2年目には、トレーのほとんどのチーズを制覇した。むしろ淡白なクセの無いものより、強烈な匂いや個性を好むようになった。それからずっとチーズが大好きだが、日本では高いのが‥‥。パリにいるときに、もっと食べておくべきだったと悔やんでも遅い。今や買うときも、ブルーチーズや臭いチーズを選んでしまう。
(2013.7.18)
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