▲関門トンネルの入り口(門司側)
在来線で関門海峡を潜り抜けたのは何年振りのことだろう。
二十歳を過ぎた頃から東京や関西方面に行く時は航空機を利用し、九州新幹線が全線開通した後は関西方面へは新幹線を利用する。
考えたら在来線の関門トンネルを通って本州に上陸するのは四十数年ぶりだろうか。
今や貴重な存在の415系交直流電車に乗り込み、門司駅を出発する前に席を離れて車両の前方に行き、運転席の窓から動き出した列車が関門トンネルに入るところを確認した。
熊本の高校を卒業してから数年間は千葉県の市川市に住んでいて、上京する際も帰省する際も九州と東京を結ぶ寝台特急「みずほ」や「はやぶさ」を利用した。九州を離れる、九州に戻って来た、という感慨深い思いで関門トンネルを通過したものだ。
もうひとつ門司と下関の間には鉄道好きには大いに興味のある区間なのだ。日本には青函トンネルと関門トンネル、山陽新幹線の新関門トンネルの3つしかない海底トンネルであることも大きな興味があるが、もっと鉄道好きが惹かれる点は、同じ電化区間でも山陽本線の直流、九州内の交流と方式が違っていてその切り替え区間が門司駅の側にあることだ。
そのために、交流と直流の切り替え区間を走る列車は転換する区間を電気の供給を受けない惰性で走行する。数秒間、車内の電灯も消えてしまう。一般の人があれって思う程度の事象だけど、鉄道好きはその瞬間がたまらないのだ。
また電化方式が違うと言うことは走る車両も電車であれ機関車であれ、直流電車、直流機関車、交流電車と違うのだが、この両方の方式を跨がって関門トンネルを走る列車は交直両用の特別な機関車、電車であり、関門トンネルを通る列車が激減した現在では貴重な車両となっている。
山陽新幹線が博多まで開通するまでは、交直両用の電車が大活躍し、九州各地と山陽新幹線の終着駅だった岡山の間を特急つばめや急行有明など数多くの特急や急行が行き来し、また東京や関西行きの寝台列車も前述のみずほ、はやぶさ以外にも長崎方面のさくらや大分宮崎方面の富士など数多く存在して交直両用の機関車も活躍していた。
主に寝台列車で関門トンネルを抜けていた私は門司と下関でで機関車を付け替えるための停車時間があり、そこで九州を出る、九州に戻ったという想いを受け止める間があったのである。
2023年3月22日。私は若い頃から一度はやりたかった「青春18きっぷ」のひとり旅に出た。
朝4時半に起き、5時過ぎに熊本市内の自宅を出発した。
「青春18きっぷ」はそのネーミングから、若い人しか利用出来ないと勘違いされがちだが利用者に年齢制限は無い。12050円で全国のJRのみどりの窓口などで買うことが出来る。ルールは一日中普通列車に乗り放題で、使用可能な期間内であれば、連続した日でなくても可。同じ行程であれば、5人1日乗り放題の旅行をするという使い方も出来る。鉄道や旅行が好きな私はずっとチャンスをうかがっていた。定まった仕事を辞め、65歳くらいでそのチャンスが来ると思っていたが、そろそろと思っていた矢先にコロナ禍が世界を襲った。この春、コロナ感染も落ち着きをみせ、心配性の家人も遠方への旅行を了承してくれた。
朝4時半に起き、5時過ぎに熊本市内の自宅を出発した。
5枚あるチケットの一日目は、最寄り駅の新水前寺駅。新水前寺駅は早朝や深夜は無人となるので、熊本駅で1枚目に日付のスタンプを押してもらった。最初の目的地は尾道。一日目の宿泊地は岡山だ。
熊本と博多の間は九州新幹線「さくら」でワープしたが、尾道到着は午後4時過ぎ。約10時間の鉄道旅は、日頃の鉄分不足を補うには充分過ぎる長さだ。
関門トンネルを抜けて、下関で乗り換えた電車は今や貴重な115系の近距離用電車。博多駅で買った駅弁を食べながら山陽路を上る。そう言えば久しぶりに列車の中で駅弁を食べたなぁ。
(2023.4.19)
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