▲横浜みなとみらいの日本丸の帆が青空に映えていた
おじさん達のため息、原鉄道模型博物館
毎年8月の最後の週末は学会出張となる。今年も24日から横浜市に出かけた。
20数年前から毎年8月になると、学会準備に全力投球が始まる。年ごとに容量が狭くなっているような気がする我が頭は、学会の準備が始まると、いつも満杯でアップアップ状態。すべてに余裕が無くなり、きれいな海に囲まれた島に勤務しながら、この20数年海水浴をしたことが無い。毎年、そんな風に夏は駆け足で過ぎて行く。さらに今年はロンドンオリンピックがあった。その上になんと思いがけず18年ぶりの母校の甲子園出場。寝不足、連日の猛暑もプラスされて、今後の夏バテには要注意である。
と、言いながら、毎年「夏バテ防止に栄養を付けなくちゃ」という言い訳をしてカロリーを取り過ぎ、1年で一番太ってしまうからご用心、ご用心。
出張初日の金曜日は、3時位までは自由時間。毎年美術館や博物館めぐりなど、観光をする。今年は早朝6時半に家を出て、朝一番の飛行機で羽田へ。11時前には横浜に出来たばかりの原鉄道模型博物館の前に立っていた。江戸時代の人なら考えられない事だが、現代人でも6時頃自宅で家人と朝食を食べ、9時半には東京国際空港に着陸し、11時には横浜の博物館にいる、この空間移動の感覚は不思議でなられない。
夏休みともあって、連日入場制限がでるほどの人気のようだが、展示会場自体がそれほど広くはないので、朝11時の会館時間に行けば、見られないことはまず無いと踏んだ。
実際、1階のエントランスには、開館直後にも関わらず、入場待ちの列が出来ていたが、20分程で、会場に入る事が出来た。
小さい頃から鉄道好き、模型好きの私にとって、一つ一つの展示に目が輝く。原氏が小学校時代に作った模型に感心し、中学時代の自作模型の技術の高さに驚く。海外のSLで一番好きなドイツ国鉄を代表する大型SLの「01」。少年の日に絵本のイラストを見てあこがれた国際特急「TEE」。
しかし、当時の高給取りの1ヶ月分の給与と変わらぬ外国製の鉄道模型を祖母におねだりして買ってもらい、小学生の時に関西に一人で旅行に出してもらい、家族でオリエント急行に乗車できる桁違いの裕福な生活が、その後の世界的なコレクションを作る素地となったことはゆがめない。鉄道模型は「TMS」、つまり時間とお金とスペースが必要と言われる。趣味の大様という言い方もされる。裕福なことが悪いと言っているのではないし、ひがんでいる訳でもない。もし裕福であったとしても、原氏のような情熱と研究熱心な姿勢をどれだけの人が持てるだろうか。原氏の情熱と環境に感謝。
会場には子ども達に混じり、私と同じ位か少し上の年代の男性も多かった。
そう。多くの男子が幼い頃に鉄道や運転手や鉄道模型にあこがれる。
古い車両が多く、あてが外れて少し退屈気味の子ども達に較べて、会場にいて、巨大レイアウトを走る列車を見つめるおやじ達の目の爛々とイキイキと輝いていることか。ため息が聞こえ、その目からは感動の涙さえあふれて来そうだ。もちろん、私もその一人。本物と同じように、鉄の車輪と、鉄のレールが奏でるかすかなジョイント音に、じっと耳を傾け、しばしすべてを忘れて夢中になった。
(2012.8.29)