▲三角線で人気の観光特急「A列車でいこう」。三角駅付近。(2011.10.8)
レールの響きとポパイ
通勤時に往復する国道57号線は熊本県の宇土半島で、海岸線の北側を半島の付け根にある宇土から半島の先端にある三角までJR三角線とほぼ平行して東西に通っている。
一部の区間では、国道と線路が並走しており、鉄道好きの私としては、単純に線路や駅や踏切などの鉄道の施設や走る列車が見られてうれしい。またうまくタイミングが合えば、走る列車としばらく並走出来る楽しみがある。
熊本駅を朝7時23分に出発し、終点三角駅に8時17分に到着する2両編成の三角線下り普通列車がある。私が熊本市内の自宅を自家用車で7時過ぎに出発すると丁度国道と三角線が並走する区間をこの下り普通列車と前後して走ることになる。
上り列車と列車交換する住吉駅辺りで出会うことが一番多い。ちなみに列車交換とは、上下する列車が1本の線路を共有する単線と言われる区間で行われる上り下りの列車が駅などで行き違うことを言う。JRはほぼ正確なダイヤで走っているので、どこでこの下り列車に出会うかで自分のその日の出勤時間が早めか遅れ気味かが分かる。
その住吉駅から次の肥後長浜駅、その次の網田駅を過ぎたところまでが、国道と線路の並走ポイントだ。ローカル線のディーゼルカーとはいえ、直線では時速70キロ以上は出ているようだ。だから先行する列車に追いつくことは出来ない。住吉駅か肥後長浜駅で停車していた発車間際の列車を追い越し、制限速度以上で国道の車が流れている時にのみ、列車との並走がかなう。
停車中に一旦追い越した列車の前照灯の灯りがバッグミラーに映り、だんだんとスピードを上げた列車が近づいてくる。私は、聞いていたFMラジオやCDを消し、線路側の助手席の窓を開ける。すると時速70キロ以上で、レールの響きも近づいてくる。カタン、カタンと単調な響きで近づいた列車は、私の車と並ぶとガタンゴトンガタンと複雑な響きをなす。列車に乗っている時に聞こえるジョイント音と同じだ。やがてスピードに勝る列車は少しずつ私の車を追い越して行くが、列車が追いついた地点によっては、次の停車のために一度追いついた列車の方が、今度はスピードを緩めるので、並走区間が長くなる。この間、あたかも列車に乗車しているかのようなジョイント音をしばらく楽しむことになる。
ジョイントとは、レールとレールの継ぎ目のことで、継ぎ目を車輪が通過する時に立てる音のことをジョイント音と言う。レールの響きとは、ガタンゴトンガタンというジョイント音のことである。
音の静かさと振動の少なさを求める新幹線は、このレールとレールの継ぎ目のジョイントを溶接して無くしたロングレールというもの使っている。ロングレールは新幹線だけではなく、同じ理由で在来線の幹線にも普及している。九州新幹線の開業する前に博多と新八代間を走っていた787系の特急「リレーつばめ」に乗ると、通過駅などでポイントの上を走るとき以外は、ほとんどの区間がロングレール化されていてジョイント音は無かった。モーター音のような音が聞こえるのみで、振動も少なく飛んでいるような滑らかなスピード間のある走りだ。この在来線の787系でさえ、時速130キロ運転をしていた。もし時速200キロ以上の新幹線がロングレールでなかったら、スピード感どころか、さぞうるさい音になっただろう。
小さいころ、「ポパイ」というアニメが放送されていたが、そのテーマソングがこのレールの響きとマッチして、列車に乗っていると、なぜかポパイのテーマソングが私の頭の中でくり返し鳴り続ける。頭の中のテーマソングは、列車のスピードでテンポが変化する。三角線などのローカル線では、ポパイのテーマソングの本来のテンポにぴったりだが、鹿児島本線の電車急行に乗ると、途端に歌のテンポが速くなる。それがまた私の中で列車のスピード感を感じさせた。もし新幹線にジョイント音があったとしても、早過ぎてテンポを合わせて歌うことは不可能だし、ポパイのテーマソングが頭に浮かぶことはなかっただろう。
(2012.6.28)
レールの響きとポパイ
通勤時に往復する国道57号線は熊本県の宇土半島で、海岸線の北側を半島の付け根にある宇土から半島の先端にある三角までJR三角線とほぼ平行して東西に通っている。
一部の区間では、国道と線路が並走しており、鉄道好きの私としては、単純に線路や駅や踏切などの鉄道の施設や走る列車が見られてうれしい。またうまくタイミングが合えば、走る列車としばらく並走出来る楽しみがある。
熊本駅を朝7時23分に出発し、終点三角駅に8時17分に到着する2両編成の三角線下り普通列車がある。私が熊本市内の自宅を自家用車で7時過ぎに出発すると丁度国道と三角線が並走する区間をこの下り普通列車と前後して走ることになる。
上り列車と列車交換する住吉駅辺りで出会うことが一番多い。ちなみに列車交換とは、上下する列車が1本の線路を共有する単線と言われる区間で行われる上り下りの列車が駅などで行き違うことを言う。JRはほぼ正確なダイヤで走っているので、どこでこの下り列車に出会うかで自分のその日の出勤時間が早めか遅れ気味かが分かる。
その住吉駅から次の肥後長浜駅、その次の網田駅を過ぎたところまでが、国道と線路の並走ポイントだ。ローカル線のディーゼルカーとはいえ、直線では時速70キロ以上は出ているようだ。だから先行する列車に追いつくことは出来ない。住吉駅か肥後長浜駅で停車していた発車間際の列車を追い越し、制限速度以上で国道の車が流れている時にのみ、列車との並走がかなう。
停車中に一旦追い越した列車の前照灯の灯りがバッグミラーに映り、だんだんとスピードを上げた列車が近づいてくる。私は、聞いていたFMラジオやCDを消し、線路側の助手席の窓を開ける。すると時速70キロ以上で、レールの響きも近づいてくる。カタン、カタンと単調な響きで近づいた列車は、私の車と並ぶとガタンゴトンガタンと複雑な響きをなす。列車に乗っている時に聞こえるジョイント音と同じだ。やがてスピードに勝る列車は少しずつ私の車を追い越して行くが、列車が追いついた地点によっては、次の停車のために一度追いついた列車の方が、今度はスピードを緩めるので、並走区間が長くなる。この間、あたかも列車に乗車しているかのようなジョイント音をしばらく楽しむことになる。
ジョイントとは、レールとレールの継ぎ目のことで、継ぎ目を車輪が通過する時に立てる音のことをジョイント音と言う。レールの響きとは、ガタンゴトンガタンというジョイント音のことである。
音の静かさと振動の少なさを求める新幹線は、このレールとレールの継ぎ目のジョイントを溶接して無くしたロングレールというもの使っている。ロングレールは新幹線だけではなく、同じ理由で在来線の幹線にも普及している。九州新幹線の開業する前に博多と新八代間を走っていた787系の特急「リレーつばめ」に乗ると、通過駅などでポイントの上を走るとき以外は、ほとんどの区間がロングレール化されていてジョイント音は無かった。モーター音のような音が聞こえるのみで、振動も少なく飛んでいるような滑らかなスピード間のある走りだ。この在来線の787系でさえ、時速130キロ運転をしていた。もし時速200キロ以上の新幹線がロングレールでなかったら、スピード感どころか、さぞうるさい音になっただろう。
小さいころ、「ポパイ」というアニメが放送されていたが、そのテーマソングがこのレールの響きとマッチして、列車に乗っていると、なぜかポパイのテーマソングが私の頭の中でくり返し鳴り続ける。頭の中のテーマソングは、列車のスピードでテンポが変化する。三角線などのローカル線では、ポパイのテーマソングの本来のテンポにぴったりだが、鹿児島本線の電車急行に乗ると、途端に歌のテンポが速くなる。それがまた私の中で列車のスピード感を感じさせた。もし新幹線にジョイント音があったとしても、早過ぎてテンポを合わせて歌うことは不可能だし、ポパイのテーマソングが頭に浮かぶことはなかっただろう。
(2012.6.28)