▲真夏の雲はまだ撮影していない。密度の高そうな、雲の上に乗れそうな入道雲をカメラに収めたい。
夏と甲子園とオリンピック
夏の高校野球、熊本県大会決勝戦。
1点リードで迎えた8回裏2アウト満塁のチャンス!今日あたっている9番バッター安藤君が振り抜いた打球は、相手のレフトを越え、フェンスに向かって転がる。走者一掃の長打だ。その瞬間、勝利をほぼ確信し、胸がいっぱいになって頭から被っていたタオルで汗といっしょに涙を拭った。
その年のチームが強くても弱くても、毎年夏の甲子園の熊本県予選は、組み合わせ抽選会の段階からワクワクし、必ず一試合は球場へ出向き生で応援をする。それは私自身の夏の年中行事だ。仕事があるので土日の試合しか応援には行けないし、ある程度勝ち進んでくれないと母黌の試合が週末にあるとは限らない。ここ2年ばかりは、タイミングが悪く、母黌の応援で球場に駆けつけることが出来なかった。そうやって夏の予選の戦いぶりを見て満足するばかりの18年。前に母黌が甲子園出場を果たしたときは、いろんな事情で、私は甲子園まで応援に行くことが出来なかった。次に出場の機会を得たら甲子園に応援に行きたい。しかし「生きている間にもう済々黌の甲子園出場は無いのかも」。ここ10年程は正直半分以上そう思ってあきらめかけていた。
「今年のチームは違う」と思ったのは、秋の新人戦からよい戦いを続けていること。いくつかの大会でベスト4に残っていた。しかもさらにいいピッチャーだと評判のエースは、夏の予選には長い故障から復帰するらしい。同級生が集まると「今年はもしかしたら‥‥」と話が出るようになった。私も夏の予選を待ち切れず、ベスト4のRKK旗、準優勝のNHK旗と公式戦を久しぶりに生で観戦した。
第4シードで迎えた今年の夏の県大会。春の甲子園で活躍し、秋からの大会でも県内ではレベルの差を見せつける第1シードの九学と、勝ち抜けば準決勝で対戦する。甲子園の道に大きく立ちふさがる九学。決勝戦の前日にその九学と対戦した。1点を争う息もつけないような緊迫の試合だった。そして結果は1対0で強豪九学に完封勝ち。その日は試合中、仕事が手につかず、結局テレビの前で応援した。もう決勝はテレビではなく球場に行き、生で応援したい。平日だが何とか仕事を休む都合がついた。
4点差で迎えた9回、アウトをとる度に、甲子園が近づいている現実が信じられなかった。最後の打者を三振にとり試合終了。18年間見続けた夢への切符をつかみ、不覚にも感動で黌歌が歌えなかった。
相手は、必由館高校。立田山の麓にある済々黌に近い坪井にある熊本市立の高校。監督は済々黌のOBで、ユニホームも同じ臙脂色に白の早稲田カラー。粘り強い野球で個性的な選手が多く、戦いぶりも似ていて私も済々黌の次に応援している好きなチームだ。もし決勝で母黌が敗れていたら、熱心に応援していただろう。
春夏を通して甲子園の高校野球では、まず予選では誰でも母校や故郷の地元の学校を応援するだろうが、そこが負けた後は、甲子園では県の代表を懸命に応援する。熊本の代表が負けたら、残っている九州沖縄の代表校を応援する。もし九州内の高校が全部敗れ去ってしまったら、今度は日本を東西に分け、九州に近い西日本の学校を応援してしまう。
今週、ロンドンオリンピックが始まる。平和の祭典と言われる一方で、シリア紛争などの関係で、ミサイルまで配置した生々しいテロ対策の中開催される。
オリンピックではもちろん、日本中が一つになって日本選手を応援する。もし他の惑星に宇宙人がいて、宇宙オリンピックが開かれたら、地球が一つになって、シリアも北朝鮮も中国もロシアもアメリカも、国籍に関係なく地球の代表選手を応援するのだろうか。(2012.7.26)