かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

【メモ―フクシマ以後】 放射能汚染と放射線障害(15)

2024年12月15日 | 脱原発

2016年6月10日

 デモの集会の最後に司会者から指名があって、ストロンチウムの話をしてくれという。福島事故の後はもっぱらセシウムばかりが話題になっているが、ビキニ環礁の水爆実験による第5福竜丸の被爆ではストロンチウムが話題になった。そのストロンチウムである。
 ウラニウム235の核分裂では核分裂生成物として様々な放射性核種が生まれるが、その分布は原子量90と140付近にピークがあって、そのなかで半減期28年のストロンチウム90(Sr-90)と半減期30年のセシウム137(Cs-137)による被爆の影響が大きい(初期被爆では甲状腺がんの原因となる短半減期のヨウ素が問題になる)。
 ベータ線とガンマ線を出すCs-137と違って、Sr-90は純ベータ崩壊のためガンマ線を出さない。そのため、電子であるベータ線の測定が難しいこともあって、Cs-137のようにあまり測定されることがない。測定されてもデータにばらつきが多く精度に劣る例が多い。
 問題は、測定されていないということでSr-90の汚染をないことにしようとする原発推進勢力の思惑が強いことである。しかし、核分裂ではCs-137の量に匹敵するSr-90が生まれているうえ、セシウムはナトリウムやカリウムと同じアルカリ金属、ストロンチウムはマグネシウムやカルシウムと同じアルカリ土類金属で、化学的性質が比較的似ているため、原爆から放出された後の挙動に極端な差があるとは考えにくい。測定していないことをいいことに、Sr-90の汚染はCs-137の1000分の1だとか2000分の1だとする言説があるが、まったく根拠がない。食品の政府規制値がkgあたりCs-137、100ベクレルだとすれば、それにともなってかなりの量のSr-90が含まれていることになる。
 おおむね、そのようなことを話した。Cs-137は1個のベータ線を出して崩壊するが、Sr-90は1個のベータ線を出してY-90(イットリウム90)に崩壊し、さらにY-90はもう1個のベータ線を出して安定なジルコニウム90に崩壊する。つまり、Sr-90は内部被爆においてCs-137の2倍の破壊力を持っている、ということまでは話しそびれた。


2016年6月17日

 デモ前集会の最後に、今日も司会者から指名と話題の指示があって、「管理区域」の話をした。
 放射性物質を扱う事業所や職業人を対象とした法律である「放射線障害予防法」に年5mSvを超える被爆のおそれがある施設を管理区域にし、管理区域境界では年1mSv以下としなければならないと定められている。
 管理区域には一定の放射線作業についての教育・訓練を受けた人間のみが立ち入りを許され(未成年は不可)、区域内での飲食は厳禁される(法は内部被ばくの恐ろしさを知っているのだ)。放射線作業従事者の被ばく線量限度は1年で50mSvを越えず5年平均で20mSv以下としなければならない。実際には、成年男子や妊娠の可能性のある女性、身体の部位などに応じて細かな限度が設けられている。この線量限度は、そこまで浴びても大丈夫という指針では決してない。職業上の利益と交換しうるぎりぎりのリスクという意味である。
 私が関係した大学の管理区域での被ばくはフィルムバッジ(とガラスバッジ)で管理されていたが未検出がほとんどであって、たまにわずかでも検出されるとすぐに対策がとられて、法で定める線量限度まで被曝することはまったくなかった。これはほとんどの事業所でも同様で、福島事故以前は少なくとも管理者も作業従事者も法的な線量限度に関係なく「できるだけ放射線は浴びない」という「常識」で行動していたのである。福島の原発事故はそのような健全な常識をも打ち壊したかのようである。


 

 
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