これは、朝日新聞の投稿欄「朝日歌壇・俳壇」に掲載された短歌と俳句の中から、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉溶融事故に関連して詠まれたものを縮刷版から抜き書きしたものである。
原発事故の発生時から2012年7月までの期間について順次抜き書きを進めていて、今回は2011年11月に掲載されたものである。
2012年8月以降については、新聞発行をリアルタイムでフォローしながら適宜まとめてこのブログで紹介している。
2011年11月7日
「福島産ですが」と梨を配る度少し故郷を裏切る心地す
(所沢市)園鈴子 (永田和宏選)
2011年11月13日
三つめの季節が巡り福島を遠く離れて長袖を着る
(横浜市)蕪木由紀 (高野公彦選)
あの日から雨がまつわるよでならぬ雨は直なる雨こそよけれ
(福島市)青木崇郎 (永田和宏選)
汚染のち除染のち仮処分とう拭えざるままフクシマに冬
(福島市)美原凍子 (馬場あき子選)
フクシマの生活(くらし)の歌を読めばなお閑(しず)かにおれよこちらの原発
(宇和島市)河野利夫 (佐佐木幸綱選)
変えよとふ声高らかに温きもの小さきものらの逐はれゆく国
(名古屋市)堀信太郎 (佐佐木幸綱選)
2011年11月21日
一生の間検査を受けること心の被爆は測ることなく
(盛岡市)菊池陽 (馬場あき子選)
避難後の月に一度の団欒を夢のようだと夫は言えり
(横浜市)蕪木由紀 (馬場あき子選)
2011年11月28日
荒草を分け入るわが家戻れざることを予感す一時帰宅に
(東京都)反杭蛍子 (馬場あき子、高野公彦選)
福島を「負苦島」にして冬が来る汚染されたるまんまの大地
(福島市)美原凍子 (高野公彦選)
西に8基、東に7基のど真中銀座に住んでフクシマを想う
(小浜市)津田甫子 (高野公彦選)
(写真は記事とは無関係)