かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

【メモ―フクシマ以後】 脱原発デモの中で (26)

2025年02月01日 | 脱原発

2017年3月12日

 「福島原発事故を忘れない3・12アクション」

 集会での最後のスピーチは、日本基督教団東北教区放射線問題支援対策室いずみの服部賢治さんが福島の放射線被ばくと子どもたちの甲状腺がんについて語られた。被災時に18歳以下だった子どもたちの1回目の検査で116人に甲状腺がんとその疑いが見つかった時、福島県と専門家たちはスクリーニング効果だとして原発事故との関連を否定したが、2巡目の検査で見つかった69人中68人は一巡目で異常がなかったのでスクリーニング効果(過剰診断)という論拠が崩れているが、県は未だにその意見を変えようとしない。
 また、NPO法人「3・11甲状腺がん子ども基金」の活動も紹介された。基金では甲状腺がんの子どもに一人当たり10万円の支援を行っていて、これまで66人に給付を行った。66人の内16人は、秋田、宮城、群馬、埼玉、茨城、千葉、神奈川、新潟、東京などで、子どもたちの甲状腺がんが福島を中心に広域にわたっていることが明らかになっている。しかも福島県以外では、定期的な検査がなく、自覚症状が出てからの診断なので重症化している例が多いという。全県的な検査が行われていない宮城県にももっと多くの発症者がいる可能性がある。唯一検査を行った丸森町では2名の甲状腺がん(またはそのおそれ)が見つかっている。
 このように甲状腺がんの広域的な多発のおそれがあるにもかかわらず、福島では検査を縮小しようとしているうえ、避難者に対する差別と同じように甲状腺がんやその疑いの人たちにさまざまな差別が起きているとも話された、服部さんは次のような言葉でスピーチを終えられた。

「福島原発事故は終わってはいません。健康影響の発生を未然に防ぐことや、起きてしまった健康被害を解決していく道筋を作っていくことが重要だと思います。
 事故由来の放射能汚染があった地域における健康影響をモニタリングすること、可視化すること、被害を低減する取組みが非常に重要だと思います。
 福島県で行われている甲状腺検査など子どもたちへのフォローなど、今後、社会的にどう取り組んでいくのか、国や行政が消極的な姿勢のなか、私たちが被災当事者としてどうあるべきか、私たちの主体性が問われていると思っています。
 福島県はもちろんですけれども、それ以外の地域でも被害者の甲状腺のモニタリングをしていくことが、福島県の人たちや、今も苦しんでいる方々への応援になると信じています。
 今日は震災で亡くなられた方々への追悼と祈り、そして脱原発、脱被ばく、未来は変えられると信じて、今日は歩きたいと思います。」

 服部さんが話された放射線被ばく由来の甲状腺がんが、チェルノブイリ事故では5年後から急増したことはよく知られている。福島県の甲状腺がんの多発ばかりではなく、周辺の1都9県でも発生しているにもかかわらず、福島県は検査を縮小しようとするのは、健康被害を防ぐという観点からはまったく逆行している。なぜそのような方向に思いが至るのか、想像することすら難しい。福島の甲状腺がんが事故由来ではないことに医学的な確信があるなら、どれだけ検査をしても問題ないはずだからである。ましてや、検査費用など膨大な原発事故処理費用のなかでは negligible small だから、予算上の問題とは考えにくい(東電1Fの廃炉費用は40兆円とも60兆円とも言われている)。
 私が唯一思いつくことは、「探さなければ見つからない」、「見つからなければないことにできる」というばかげた心理作用がさせる愚行ということだ。甲状腺がんは原発事故由来ではないと主張してきた面々はおのれの間違いに気づき始めていて、チェルノブイリのような急激な増加が現れない(見つけられない)ように検査を縮小して、できるだけショックを和らげようしているだけなのかもしれない。敗北戦、撤退戦での傷を深くしないような企まざる作戦ということだ。しかし、それは気分的なごまかしにすぎず、自覚のない自己欺瞞そのものである。
 しかし、晩発性放射線障害は甲状腺がんばかりではない。白血病もあれば、遺伝性障害もある。これから少しずつ精細な結論、反撃できない証拠が人命を犠牲にしつつ顕在化していくにちがいない。そのとき、不作為の犯罪を咎められる医師や政治家や官僚が否応なく出てくるだろう。薬害エイズ事件で医師と企業と官僚が罪に問われたように………。

 


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