「今日のN沢、どうだった?」
「場所によっていい感じで、結構採れたね。」
「いよいよだね。で、明日行けそう?」
「行ってみたいと思う。」
「じゃあ・・・、1時50分出発ね。よろしく!」
今朝、N沢に入ったA氏からの情報である。
いよいよ始まったという気分。3月から始まった山菜採りだが、ここまで悲喜こもごも、何度かのピークを経て、このN沢のタケノコ採りが最大の頂点と言ってよいだろう。なんと言っても、『月山筍』の聖地。採れるタケノコの品質も量も極上なのだから。
ただ、問題もある。そのうちの一番は、自分自身の体力だ。「今年も採りたい!」という思いは変わらないのだが、「行けるかな?そして、帰ってこれるかな?」という不安も増してきているんですね。なんてったって、遠くて重い。それなのに、自分自身の体力が、落ちていることは確か。一応は、それなりに身体を動かしてはいるんだけど、登っても走っても息切れして、長く続かなくなってきてるんですよ。無事に採り場まで辿り着けて、帰ってこれるんだろうか?そんな思いを抱きながらの出発になった。
山奥だけど、既に車がいっぱい
身支度を整えて、歩き始めたのが、午前3時20分ちょっと前。まだ、真っ暗闇です。
N沢の渡渉点にはスノーブリッジ
ここまで40分。ヘッドランプに頼らなくてもいい明るさになった。
やっぱり、今年の残雪は多い。これは、歩きやすい一方で慎重を期すべき危険な状況でもある。絶対に甘く見てはいけない。
夜明けが近づいてきた
最初の尾根登りの頃、夜が明けてきた。上の写真は、途中でひと息入れた時のものです。
山の斜面に残る雪
去年よりも雪が多いことは確かです。
沢と雪渓を渡りながら登り続ける。海抜、千ウン百メートル地点に到着。
2年ぶりの大雪渓
去年は怪我のために来れなかったけれど、2年ぶりにこの斜面に来ることが出来た。それだけで嬉しい。
辛いところだけれど、ここから更に登るとタケノコが生えているはずなのだ。
気合いを入れ直して、雪渓を登る。上に行くほど急になっていき、たまらず藪に潜り込む。
ここからが更に辛くなる。雪渓と違って、掴むことができる枝はあるのだが、笹竹の藪は、『硬い』『滑る』『反発する』の三拍子揃った進みにくさなのだ。それでも、暫く登っていくと、見えてきた。
「おおい!出てるぞ!」
「こっちにも出てる!」
いいじゃない!
そこからは、体力勝負。前後左右、どちらに進もうとしても笹藪の妨害が待ちかまえている。下手をすると、1m先のタケノコに手が届かないのだ。
でも、頑張りますよ!なんたって、この瞬間が今日の、いや、今シーズンで最高に命が輝く時なのだから。
見えますか?
こんな感じに出ていました
実は、画像よりも沢山のタケノコが集中して生えている場所もあったんだけど、体力的にも心理的にも、写真を撮る余裕はありませんでした。
「おおい!どうだ!」
「十分! 戻るか?」
「うん。戻りながらでも採れるからなあ。」
その気になったら、まだまだ採れるのかもしれないけれど、今年もこの斜面に来れたことに満足している自分、また、これ以上収穫量が増えることに不安を覚える自分がいる。A氏も似たような心境なのだろうか。
不安定なスノーブリッジが連続する 帰り道も慎重に
このぐらいの雪渓だと安心
次に来るときは、この雪渓も形を変えているはず。
下るにつれて、花が目立ち始めた。
リュウキンカが花盛り
ムラサキヤシオも美しかった
午前8時過ぎには車止めに戻ることが出来た。
「逢う人みんなから『もう帰んのが!?』って言われるんだず。」
「多分、おらだが一番早く帰ってるよね。」
「採りすぎても困るしなあ。」
「うん。プロではないからね。」
この山に入る時には、いろいろなことを考えさせられる。
『順調に成長した旬のタケノコが採れるだろうか』という気持ちは勿論なのだが、『無事に辿り着けるだろうか』、そして『自分の体力でも、この山は受け入れてくれるのだろうか』みたいな不安も頭をよぎる。まるで、この山でかつて山伏達が行ってきた修行のようなのだ。今風に言い換えると、体力検査を受けに来たような気分にさせられる。
その分だけ、行けたこと、収穫出来たこと、無事に帰り着くことが出来たことの喜びが、他の山菜採り場よりずっと大きいのだ。
はああ。
今年も、無事にタケノコ採りを楽しむことができました。体力検査は、とりあえず合格かな。
本当にありがたいことです。
山の神様、今年もありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
無事にお帰りになられてよかったですね。
コメントありがとうございます。
無事に行って帰ることができてほっとしました。
タケノコの品質にこだわると、やっぱりこの山ですね。
詳しくは、明日アップします。