時間が少し遡る。
今回、受診、即入院となったその日の夕方、診察をしてくれた医師さんが部屋にやってきた。
その日の時点で分かること、想像できることを伝えに来てくれたのだ。
その中で、
「今回の治療の場合、患部の除去とともに、声帯も除去しなければならない可能性があります。」
そんで、
「声帯を取り除いたら、マタギさんの声は、もう2度と発することができなくなります。」
そうですか。
「でもね、AIの現在の技術って日進月歩で発達しているから、もしかしたら、マタギさんの声を再現できるようになる可能性があるんですよ。」
そう言えば、もしかして、ああいうやつかな?
以前、某テレビ番組で、今は亡き昭和の歌姫の歌声をコンピューターを駆使しながら再現する試みを行っているのを見たことがある。
確かに、そういう需要があれば実現してしまうだけの技術が、現代にはある。
「それで、近いうちに、誰かの声をAIを使って簡単に再現させるってことが可能になると思うんです。」
ほう、面白そう。
「ただ、もとになるデータがないと再現は無理。 だとすると、声が出なくなる前に自分の声を残しておく必要があるんです。」
確かに、その通りですな(歌姫のデータは無限にあった)。
「それで、もし、興味を持たれるのであればと思い、話させていただきました。」
はい、その話、乗った!
その日の夜の担当看護師さんが、いかにもパソコンに強そうな若者だったので、声を掛けると、早速、話に乗ってくれて、『ヴォイスレコーダー』なるアプリをチャチャッとダウンロードしてくれた。
第一段階、準備完了。
ただ、記録として残す音声のデータは、多いほどいいに決まっている。
だったら、『本の朗読』ですね。
翌朝、売店に置いてある本の中から興味を惹かれたものを買ってきた。
この本、面白そう
しゃべれなくなるというのに、『しゃべるための本』を買ってしまった。
まあ、暇つぶしの読書も兼ねた録音だから、面白さが第一ですがな。
この本、中身もすごく面白いのだが、章立てがとても分かりやすいし、文章の長さもちょうど良く区切られている。
では、やってみましょうか。
やってみると、マタギの実力では、初見で上手な朗読なんてなかなかできないことが分かった。
それに、読む速度が速すぎたり、発音があいまいだったりで聞き取りづらかったりもする。
そこからは、口の開け方だのテンポだの強弱だの、色々なことに頭を巡らせながら朗読大会。
2日間かかって、手術前日の夕方までに録音を完了することができました。
マタギの声のアルバム
まあ、これを使うことになる可能性はそんなに高くないとは思うんだけど、自分としては、満足の行く時間を過ごせたのだから、それでいいじゃない。
『声が出るうちにできること』
曲がりなりにも目的達成できてよかった。
コメントありがとうございます。
なんか、すごく励みになる言葉で、元気が出ました。
おっしゃる通りで、どんな事態も前向きにとらえていくつもりです。
他のブロ友さん達からも、色々な言葉を戴きました。
こういう言葉が、心の励みになるんだなあと、あらためて実感しています。
ブログ訪問をサボっていて、今回の緊急入院と手術のことを今知りました。
今は術後の観察療養中でしょうか。
何事にも前向きなマタギさんのこと、色々な事態が想定されるようですが、きっと全てが良い方向に向かうものと信じております。
それにしても、食事制限は辛いところですね。
一刻も早く快復されて美味しい山の幸を頂けるようになると良いですね。
どうぞお大事になさって下さい。