「ところで八郎君、君の家は代々、浄土真宗だったろう
なのに、なぜ十字架を持っているんだい」
「家族には言ってないけど、僕は隠れキリシタンなんだよ
子供の頃は毎朝、浦上天主堂に行っていたし
この十字架はね、途中で90度折り曲げられるんだ
ほら、こうすると、お寺の卍マークになるんだ
裏返すとナチスのマークにもなるし
世渡りするには色々と便利なんだよ」
お寺の境内の花梨はそろそろ黄金色になり始め
秋を思わせるさわやかな香りを
風に漂わせていた
土の上にはたくさんのセミが転がって
カサカサとはかない命の音をたてていた
なのに、なぜ十字架を持っているんだい」
「家族には言ってないけど、僕は隠れキリシタンなんだよ
子供の頃は毎朝、浦上天主堂に行っていたし
この十字架はね、途中で90度折り曲げられるんだ
ほら、こうすると、お寺の卍マークになるんだ
裏返すとナチスのマークにもなるし
世渡りするには色々と便利なんだよ」
お寺の境内の花梨はそろそろ黄金色になり始め
秋を思わせるさわやかな香りを
風に漂わせていた
土の上にはたくさんのセミが転がって
カサカサとはかない命の音をたてていた