ゆめ未来     

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今週の読書! 温泉妖精/過ぎ去りし世界 /テロリストの息子

2016年04月30日 | もう一冊読んでみた
 今週は、この3冊。
 温泉妖精/過ぎ去りし世界/テロリストの息子

温泉妖精/黒名ひろみ  2016.4.30

 黒名ひろみさんの小説は、初めて読みました。
温泉妖精』は、秀逸なユーモア小説です。
主人公の絵里、影とアンナちゃんやその他の人物描写も輝いている。
実に面白かった!。
お薦めの一冊です。

 後ろめたさはあるが、盗み聞きは妙にときめくものだ。

 毛に対する悩みは誰にも打ち明けられない。

 竹垣の向こうから湯の音が聞こえていた。のれんから覗くと、影はすでに湯舟の中にいた。昨日は誘いに乗らない清純な男を装っていたのにやはり待っていた。..........
 「あんた不能なの」
 「下品なことを言うな」
 「だって見たいんでしょう? 昨日は覗いてたじゃない」
 「見てない。見えただけだ」
 「あなたもパンツ脱ぎなさいよ。女が裸で全部見せているのに、男がパンツはいてるのはおかしいでしょ。普通は逆なんじゃないの。わたしが脱いでいいと言っているのに、どうして隠しているのよ。もしかして小さいとかでコンプレックスがある? そんなの気にしなくていいよ」
 影の耳の縁が真っ赤になった。
 「なんてえげつない女なんだ」


 長い旅に出たとして戻ってきたその後はどうするのだろう。

   『 温泉妖精/黒名ひろみ/集英社 』



過ぎ去りし世界/デニス・ルヘイン  2016.4.30

 ボストンのコグリン一家の三部作。
三作目『過ぎ去りし世界』を読みました。
厳しい世界に生きる男の物語です。
ギャングの世界は、死屍累々の暗黒だった。

  一作目 『運命の日』(ハヤカワ・ミステリ文庫)
  二作目 『夜に生きる』(ハヤカワ・ミステリ1869)
  三作目 『過ぎ去りし世界』(ハヤカワ・ミステリ1906)

 これが人生でないことを----人生が別れの連続でないことを----願った。

 でもそれでいい----真剣なことがあればこそ、人生には生きる価値がある。ほかのこと、たとえば女の子や、冗談や、くだらない遊びや、だらだら怠けることは、たしかにどれも愉しいが、あとに残らない。真剣になると心に残り、生きていると感じられる。いまはものすごく真剣なときだ。

 人は人生でしたことを後悔するんじゃない。しなかったことを後悔するんだ。


 おっかないギャング同士の滑稽な姿にニヤニヤ。

 部下が、ジョーに近づいてボディチェックをした。
 あらかた終わると、その男はジョーの股間をちらっと見た。
「そこも調べさせてもらう。あの話を聞いたからな」
ターナー・ジョンの息子三人を欺いて、デリンジャーを持ち込んだことがあった。陰嚢の下に押し込み、十分後に取り出して、.......
ジョーはうなずいた。「手早く頼む」
「大きくするなよ、いいな?」
 ........
 「いいだろう」部下は一歩下がった。「手早くやったから、でかくならなかった」
 「これが最大かもしれない」
 「だとしたら、神様はあんたを作ったとき酔っ払っていたんだ。気の毒に」


 『 過ぎ去りし世界/デニス・ルヘイン/加賀山卓朗訳/ハヤカワ・ミステリ 』



テロリストの息子/ザック・エブラヒム+ジェフ・ジャイルズ  2016.4.30

 ザック・エブラヒムさんのノンフィクションです。
狂信的、のめり込み、ずるずると深みに引き込まれて、気がつけば家族を巻き込んで身の破滅、という怖さを感じました。
ぼくは、これまでの生き方から「暴力や武力によっては、何事も真の解決は図れない」との信念を強く持っています。
その確認。

 父は道を見失ってしまった。だからといって、僕が自分の道を見つけられなくなる、ということはなかった。

 自分たちと違うタイプの人間を恐れ、自分の「安全」のために、こうした人間からなるべく遠ざかるように隔離されてきたのだ。偏見は狂おしいほどに完璧なサイクルだ。そもそも偏見の対象を恐れべきかどうか、自分で決められる位置まで近づくことはなかったのだから。

 『 テロリストの息子/ザック・エブラヒム+ジェフ・ジャイルズ/佐久間裕美子訳/TED Books 朝日出版 』

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